2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770142
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岩崎 哲史 神戸大学, 遺伝子実験センター, 技術専門職員 (40379483)
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Keywords | 発生・分化 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
受精初期の分子メカニズムを明らかにするために、アフリカツメガエルXenopus laevis(以下ゼノパス)卵細胞を脊椎動物の受精モデルとして用いて解析を行った。平成22年度は卵細胞や卵母細胞における遺伝子翻訳調節に関与する因子であるheterogeneous ribonucleoprotein K(以下、hnRNP K)の解析を行った。これまでにhnRNPKはゼノパス卵母細胞において14種類のmRNAと特異的に結合していることが示されている。そこで本研究ではこれら発現産物の卵・卵母細胞内の局在について解析を行った。その結果、これらのうち4分子種がゼノパス卵・卵母細胞を通して翻訳され、分子種により固有の発現パターンを示すことが明らかになった。例えばセリン・トレオニンキナーゼMEK3は90%が細胞質画分、10%は細胞骨格に、転写因子XER81は細胞質画分に70%、膜画分に30%局在することが明らかになった。しかしこれらのいずれの分子種においても、卵成熟・初期発生過程において明瞭な局在変化は見いだされなかった。そこで遺伝子発現に関わる他の分子について解析を進めたところ、配列特異的にDNAに結合して遺伝子発現に関わるSignal ransducer and activator of transcription 3 (STAT3)がゼノパス卵成熟や受精時おいて、そのリン酸化状態が変化することが明らかになった。これまでの研究から、ゼノパス受精時にはチロシンキナーゼxSrcが活性化されていること、hnRNP KやSTAT3はSrcの基質であることが知られている。このことから卵成熟や初期発生期にhnRNPKやSTAT3は個体発生に必要な遺伝子発現をxSrcによってコントロールされる可能性が高いと考えられる。 本研究成果は配偶子や初期胚における遺伝子発現コントロールと、リン酸化酵素の介するシグナル伝達カスケードとのクロストークを明らかにするものであり、その分子基盤を築くものである。これまでにhnRNP Kは遺伝子発現コントロールを通してがん抑制に関与することが報告されている。本研究成果は基礎生命科学上の成果にとどまるものではなく、抗がん創薬研究、生殖医療研究等にも発展すると期待される。
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