2011 Fiscal Year Annual Research Report
血液中のグレリン代謝経路の解明およびグレリン代謝酵素の精製と遺伝子クローニング
Project/Area Number |
21770149
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 元康 獨協医科大学, 医学部, 助教 (20418891)
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Keywords | ペプチドホルモン / グレリン / 酵素 / タンパク質精製 / 脂質修飾 |
Research Abstract |
<血漿由来グレリン脱アシル化酵索の精製とcDNAクローニング> 本研究および他研究グループによる報告から示唆される、血漿由来グレリン脱アシル化酵素の複数の候補分子について酵素活性の測定をおこなった。その結果、補体因子C4a、alpha2マクログロブリン、コリンエステラーゼのいずれの標品でも試験管内実験で当該酵素活性を確認することができなかった。次年度にはこれら候補分子の活性発揮に必要なコファクターの探索・同定を試みながら、引き続き動物血漿や培養細胞上清などを出発点として新奇のグレリン脱アシル化酵素の精製をおこなう。 <血漿由来グレリン・ペプチダーゼの発見> 当該酵素は、本課題によって既に同定した活性化プロテインCにより生じる短縮型グレリンについて、そのカルボキシル末端を消化する活性として見出された(Satou et al, Peptides, 2011)。この酵素は全長型グレリンに対して切断活性をもたないが、短縮型グレリンから少なくとも3つのグレリン消化物を生じる。しかし、この酵素の分子的な実体は不明であるため、次年度の研究では酵索精製およびcDNAのクローニングをおこなう。 <軸索突起伸長におけるアシルプロテインチオエステラーゼ1の役割> 平成22年度までの本課題によって同定した、グレリン脱アシル化酵素アシルプロテインチオエステラーゼ1(APT1)の細胞内での役割を調べた。当該酵素は三量体Gタンパク質や一酸化窒索合成酵素などの脂質修飾を加水分解するとことで、これらの細胞内局在や活性に影響を与えていると考えられている。そこで、PC12細胞の分化に伴う神経突起伸長に対する影響を調べたところ、過剰発現させたAPT1はNGF誘導性の突起伸長を抑制した。また、NGFはAPT1の発現を転写レベル、翻訳後レベルで抑制することが明らかとなった(第84回日本生化学会年会)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血液中のグレリン分解活性について当初の目標であった4つの酵素のうち、2つを遺伝子レベルで明らかにしながら、生化学的な解析を進めることが出来た。また、これらの分解産物のグレリン受容体活性化能についても解析を進めるだけでなく、分解産物に対する新奇受容体の存在を示唆するデータを得ている。残りの酵素については、酵素学的な性質は見極めつつあるものの、分子的な実体は完全には掴めておらず、最終年度の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
酵素精製と活性評価法については十分に経験と知識を蓄積してきており、大きな問題はないと考えている。ただし、酵素活性として明らかに観察されている事象が、単一の分子によってなされているとは限らない。そのため、コファクターの存在や金属イオンなど低分子の調節因子を考慮に入れながら、引き続き研究を進めていくことが肝要である。
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