2011 Fiscal Year Annual Research Report
気管上皮細胞による流れのナノ計測に基づく計算流体力学研究
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21770158
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上野 裕則 東北大学, 国際高等研究教育機構, 助教 (70518240)
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Keywords | 繊毛・鞭毛 / ダイニン / クライオ電子線トモグラフィー法 / 気管 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
我々ヒトを含む哺乳類は呼吸によってたくさんの量の空気を体内へ取り込んでいますが、この空気中には風邪や病気の原因となるウィルス・バクテリアが含まれています。我々は日々の生活を営む上で、感染の脅威に曝されていますが、気管表面の繊毛運動によって、これら異物を体外へ放出しています。しかし、この繊毛運動がどのように駆動され、効率的に異物を排除しているのかは謎でした。本研究では、高分解能の共焦点光学顕微鏡(分解能を約8-9nm)用い、気管繊毛運動の非対称性運動を詳細に解析することが出来ました。また、クライオ電子線トモグラフィー法と呼ばれる特殊な電子顕微鏡技術を用い、気管繊毛の3次元内部構造を世界に先駆けて解明することに成功しました。その結果、繊毛の駆動力である分子モーター・ダイニン、特に内腕ダイニンの配置に非対称性があることが分かりました。これは気管繊毛が運動する際、非対称的な運動波形を示すことが知られていましたが、この非対称運動の駆動に、内腕ダイニンの非対称的な配置が関与するのではないかと考えられました。このことは、気管上皮表面で、効率的に異物排除することに非常に重要な知見であると考えています。実際に、気管表面の流体をマイクロPIV解析、マイクロPTV解析により解析すると、非対称的な繊毛運動によって多少振動しながらも、最終的には肺側から喉側へ輸送される事が分かりました。さらに異物の方の解析として、バクテリアの集団遊泳パターンの解析を行いました。さらに、異物排除機構の解明に向け、シミュレーションのためのコード開発、大規模計算のためのGPGPU実装システムの開発を行うことが出来ました。このような知見や成果は、気管繊毛の運動に関わる創薬の開発や効率的な異物排除システムの開発、医学・生物学における基礎的知見として、様々な分野に関わる重要な結果であると考えています。
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