2011 Fiscal Year Annual Research Report
トランスサイレチン中性子結晶構造解析によるアミロイド繊維化の解明
Project/Area Number |
21770159
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
横山 武司 富山大学, 医学薬学研究部(薬学), 助教 (50524162)
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Keywords | 構造生物学 / 中性子結晶構造解析 / アミロイドーシス |
Research Abstract |
昨年度までに、トランスサイレチン(TTR)の中性子結晶構造解析に向けた大型結晶作成と大強度陽子加速器施設J-PARC・物質・生命科学実験施設MLFに建設された茨城県生命物質構造解析装置iBIXを用いた中性子回折強度測定を終えた。平成23年度は、回折点の積分強度計算、構造解析、考察と論文執筆を行った。回折強度計算はiBIX用に開発されたSTARGazerを使用し、分解能2Aまでの回折点を用いて、独立な回折点が15,307で完全性が86,4%だった。Rsymが19.1%と高いが、構造解析の結果、R因子が23.4%まで下がり、構造精密化が良好に行えた。非対称単位には3,916原子が含まれ、その内2,011個が(重)水素原子であり、それらの座標、温度因子、占有率を決定した。 構造解析の結果、H88近傍に大きな水素結合ネットワークが存在することがわかった。この水素結合ネットワークはT75,W79,H88,S112,P113,T118-Bと4つの水分子からなり、その形成はH88のプロトン化状態に依存していると考えられる。つまり、pHの低下によってH88がダブルプロトン化され、この水素結合ネットワークが形成できずに構造不安定化することが示唆された。また、この水素結合ネットワークに関わるS112とP113はいわゆる二量体間相互作用領域に位置し、4量体形成に重要な役割を果たしている。したがって、pH低下によってH88のダブルプロトン化し、TTRの単量体化、アミロイド繊維化が促進される事がわかる。さらにX線解析結果との比較して、D74,H88,E89がTTRのpH感受性に強く関わる事を明らかにした。TTRにおけるpH低下とアミロイド繊維化促進を中性子結晶構造解析によって構造生物学的に解明し、その内容を科学雑誌「Journal of Structural Biology」で発表した。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Hydrogen-bond network and pH sensitivity in transthyretin : Neutron crystal structure of human transthyretin2012
Author(s)
Yokoyama T., Mizuguchi M., Nabeshima Y., Kusaka K., Yamada T., Hosoya T., Ohhara T., Kurihara K., Tomoyori K., Tanaka I., Niimura N.
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Journal Title
Journal of Structural Biology
Volume: 177
Pages: 183-190
DOI
Peer Reviewed
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