2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規一分子蛍光法による天然変性蛋白質の基質認識機構の解明
Project/Area Number |
21770173
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鎌形 清人 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90432492)
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Keywords | 天然変性タンパク質 / チトクロムc / 一分子蛍光観察 / ダイナミクス / 基質 |
Research Abstract |
本研究は、基質の認識に伴う天然変性蛋白質の構造変化を一分子レベルで観測し、その基質認識機構を明らかにすることを目的としている。22年度は、申請者が開発した新規一分子観測装置を使用し、変性した蛋白質(緑膿菌由来のチトクロムc)の物性(構造の多様性とその運動性)を測定した。チトクロムcに蛍光色素Atto532を修飾し、その色素の強度変動を観測することで、蛋白質の構造とその運動性を調べることができる。5ミリ秒の時間分解能を持ち、全長が数秒程度の一分子時系列データが約150本得られた。データを局所平衡状態解析で分析したところ、複数の局所平衡状態を特定できた。その内の2つの局所平衡状態は広がった変性状態とコンパクトな変性状態に対応した。それらの状態間の遷移も観測された。これらの結果はある特定の構造群に対応する過渡的な準安定状態が変性状態には有意に存在することを示唆する。コンパクトな変性状態の役割は折り畳みの核として働くと推測され、天然変性蛋白質では基質認識を促進する因子であると考えられる。次に、21年度に行った、基質結合に伴う糖質関連蛋白質の構造変化の一分子測定の結果を詳細に解析した。上記と同様に、蛋白質に付加した蛍光色素の蛍光強度変化を測定することで、基質結合過程を明らかにできる。解析の結果、基質の非存在下で、複数の蛋白質構造が観測され、その間の遷移運動は数100ミリ秒の時間領域で起きていた。基質結合時間と比較し、観測された運動が遅いことから、この蛋白質は、induced fit型の基質結合様式を持つことが示唆される。天然変性蛋白質は基質がない状況下で特定の構造を持たないことから、同様のinduced fit型の基質結合様式をもつと推定される。今後、天然変性蛋白質であるp53に応用することで、天然変性蛋白質の物性を明らかにできると期待される。
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