2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770174
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
上久保 裕生 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (20311128)
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Keywords | クラスリン被覆小胞輸送 / X線溶液散乱 / ドメイン配置構造 |
Research Abstract |
本申請研究では、X線溶液散乱測定法を活用することで、「構成要素である蛋白質(ドメイン)の状態変化」、及び、「蛋白質集団の性質を決定する蛋白質の離合集散過程」を構造学的に解析し、階層縦断的に蛋白質ネットワークシステムの理解を目指して研究を行ってきた。 申請者は、クラスリン被覆小胞輸送に関与するアダプター蛋白質GGAに注目し研究を行ってきた。GGAは3つのドメインからなるマルチドメイン蛋白質であり、ドメインごとに固有の機能を有しおり、ドメイン間の連動性を明らかにすることは、クラスリン被覆小胞輸送を理解する上で本質的である。先の研究では、ヒト由来GGAを用い研究を行ってきたが、全長蛋白質が不安定であるために、N末端に存在する2つのドメインのみを含む断片を使わざるを得なかった。しかし、切断部位には、N末端ドメインの機能制御に関与する配列が存在することが知られており、全長での研究を行う必要があった。昨年度は、Droshophila由来のGGA(DroGGA)の発現・精製を試み、その結果、全長DroGGAを安定に調製することに成功した。本年度は、全長DroGGAを用い、N未端ドメインへの結合因子添加に伴う溶液構造変化、並びに、リンカー領域がN末端ドメインに及ぼす影響について、X線溶液散乱測定、並びに、動的光散乱測定によって解析した。この結果、以下の知見が得られた。・DroGGAの3つのドメインは、相互作用蛋白質存在下で、互いに接触し、全体としてコンパクトな構造をとっている。・N未端ドメインに対する相互作用蛋白質存在下では、その結合により、3つのドメインが離散した構造をとる。DroGGA内部に存在する、N末端ドメイン結合領域は、他のDroGGAのN末端ドメインと分子間で相互作用を形成し、その結果、DroGGA多量体を形成する。・分子会合は、N末端ドメイン相互作用蛋白質存在下で可逆的に融解する。以上の結果から、GGAが関与する、あらたな蛋白質の離合集散制御機構が明らかとなり、GGAによるクラスリン被覆小胞形成機構の一端を解明することができた。
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