2010 Fiscal Year Annual Research Report
F1-ATPaseの回転に必要不可欠な回転子領域の決定
Project/Area Number |
21770176
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
古池 晶 大阪医科大学, 医学部, 助教 (60392875)
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Keywords | 1分子観察 / ATP合成酵素 / 回転トルク / 光学顕微鏡 / 回転分子モーター |
Research Abstract |
ATP合成酵素(FoF1)の水溶性部分、F_1-ATPase(F_1)は、ATP駆動の回転分子モーターである。筒状の固定子(α_3β_3リング)の中に、回転子(γ)が突き刺さっており、それが回転する。本研究の当初の目的は、「回転に必要不可欠な回転子領域の決定」であった。リング内の回転子領域(回転軸部分に相当)を遺伝子操作で削除した「軸なしF_1」が回転可能であることを踏まえ、その僅かな接触領域のどこかに「回転に必要不可欠な微小領域」があるという狙いがあった。 しかし、最近の実験結果は、その予想に反し、γには回転に必要不可欠な領域がないという驚くべき方向に進んでいる。(1)遺伝子操作で、γの回転軸部分をC末のαヘリックス1本にしてしまっても、野生型F_1の~20%の回転速度(~40回転/秒)、~50%の回転トルク(~20pN・nm)を示した。(2)「軸なしF_1」とは逆に、回転軸だけを持つ変異体も、100回転/秒以上の回転速度で回転した。この変異体と「軸なしF_1」の回転子に共通なアミノ酸残基は、僅か~10残基程度である。γに、回転に必須の領域がないことが確定すれば、γのどの微小領域も回転に必要な能力を持つことに、あるいは、固定子自体が、棒状のミクロ構造物であれば、何でも回す能力を持っていることになりそうである。 付加的な成果として、本研究で改良された観察系を用い、液胞型ATP合成酵素(V_0V_1)のATP駆動での回転運動について発見があった。V_1を、サブミリ秒の時間分解能で観察すると、120°ごとに小停止した。その角度でATP結合・ATP加水分解・分解物リリースの全てが行われているようである。既知のF_1の回転スキームは、回転運動についての普遍性がなかったことになる。また、V_0V_1の回転では、~30°ごとの小停止が観察された。V_0でのプロトン輸送に由来するものかもしれない。
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Research Products
(10 results)