2009 Fiscal Year Annual Research Report
ノンコーディングRNAの大量発現が引き起こす染色体異常の解明
Project/Area Number |
21770193
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
飯田 哲史 National Institute of Genetics, 細胞遺伝研究系, 助教 (60391851)
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Keywords | ノンコーディングRNA / サイレンシング / RNA干渉 / 分裂酵母 |
Research Abstract |
真核生物の染色体のいたるところから発現している翻訳されよいRNA(noncoding RNA : ncRNA)は、RNA干渉(RNAi)などの機構により分解され、染色体安定性制御および遺伝子発現制御に重要であることがわかってきました。たとえば、白血病細胞など染色体の異常が見られる細胞でしばしばアンチセンスRNAの蓄積や遺伝子発現抑制などが観察されています。しかし、そのようなncRNAの異常蓄積がどのように遺伝子発現や染色体の安定性に影響を与えているかについては不明です。そこで、ncRNA転写による遺伝子発現抑制および染色体の安定性維持の分子機構とそれに関連したRNAiのncRNA制御機構と細胞増殖における新たな役割の解明を目指し研究を行いました。分裂酵母を用いて染色体上のレポーターであるura4^+遺伝子の下流にアンチセンスRNAを大量に発現するプロモーター導入し、アンチセンスRNAの発現が大過剰になるとcisにレポーター遺伝子の発現が抑制することを見出しました。このことは、哺乳類の細胞同様に分裂酵母においてもアンチセンスRNAの発現により遺伝子の抑制(サイレンシング)が起こることから、アンチセンスRNAによるサイレンシングは種間で保存された遺伝子制御機構であることが考えられます。センス・アンチセンスの両方向のRNAの転写はヘテロクロマチン領域でも観察されており、RNAiの機構によりヘテロクロマチン化が誘導されることが知られています。そこで、アンチセンスRNAを誘導しサイレンシングが起きているレポーター遺伝子領域においてもヘテロクロマチン様の構造が出来ているかをヘテロクロマチン構造の指標であるSwi6とヒストンH3K9のメチル化が蓄積しているかをクロマチン免疫沈降により調べました。その結果、ヘテロクロマチン様の構造は形成されずにサイレンシングが起きていることが明らかとなりました。このことは、アンチセンスRNAによる遺伝子抑制機構は、ヘテロクロマチンとは異なる仕組みで遺伝子の発現抑制を行っていることを示唆しています。
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