2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770194
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
渡邊 孝明 基礎生物学研究所, ゲノム動態研究部門, 助教 (20421365)
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Keywords | 遺伝子増幅 / ガン / 遺伝子進化 / 逆位反復配列 |
Research Abstract |
平成21年度に引き続き「天然の遺伝子増幅現象におけるDRCR増幅の役割」を検証するため、長い逆位反復配列(IR)の構築に取り組んだ。前年度に樹立されたtos配列を含むBACが挿入されたCHO細胞株にTelN発現ベクターを導入した結果、全体の1~5%の分裂期染色体像にTelN作用直後の染色体やTelNにより形成された二動原体染色体が見られ、期待通り系が機能していることが確認できた。次にリアルタイムに増幅をモニターするためのTetR-EYFP遺伝子とtetOリピートを配置したBACを挿入し長いIRを構築した。しかし分裂期FISH法によりTelN発現誘導前の細胞を解析したところ、予想されるBAC挿入染色体に加え、二動原体染色体らしき像にシグナルが得られた。これは長大なIRがtos-TelN系の働きを代行して一部の細胞で二動原体染色体が形成され、増えたblasticidin耐性遺伝子のため選択されたと考えられる。この結果は増幅初期に形成される構造がさらなる増幅を促すポテンシャルをもつこと、想定よりも高い頻度でゲノム不安定化を引き起こす可能性があること、を示唆している。本来は染色体再編成を含まない細胞を用いるべきであるが、予想されるBAC挿入位置に加え二動原体染色体の少なくとも一方にもtos配列が含まれる可能性が高くTelN発現誘導によりさらなる遺伝子増幅が期待できることから、この細胞を基に増幅選択を行った。増幅を予めBACに配置したG-CSF遺伝子の発現量で評価した結果、TelN発現により発現量が向上すること、増幅選択薬剤の濃度を200nM以上とした時に生産性が増すことが分かった。以上の様に動物細胞での増幅初期に見られるIR構造はさらなる増幅を促す構造的基盤であることが強く示唆された。
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