2009 Fiscal Year Annual Research Report
染色体凝縮の制御メカニズム:小頭症の原因タンパク質MCPH1の役割
Project/Area Number |
21770196
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山下 大輔 The Institute of Physical and Chemical Research, 平野染色体ダイナミクス研究室, 基礎科学特別研究員 (50462742)
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Keywords | 染色体凝縮 / 小頭症 / MCPH1 / コンデンシン |
Research Abstract |
染色体凝縮は、複製された染色体を娘細胞に正確に分配するための必要不可欠な準備過程である。私はこの過程に必須なコンデンシンII複合体の機能がどのように調節されているのかを明らかにするために、その制御因子としての機能が予想されているMCPH1に焦点を当てて解析を進めている。MCPH1は小頭症(microcephaly)の原因遺伝子の1つであり、この遺伝子に変異を持つ患者由来の細胞では、分裂期に先立って時期尚早な染色体凝縮が観察されることが知られている。この現象はコンデンシンIIの制御異常に起因することが明らかにされ、MCPH1はコンデンシンIIの抑制因子として働いている可能性が示されていたが、その機構については分かっていなかった。 私は、ヒト培養細胞抽出液を用いた免疫沈降実験により、コンデンシンIIとMCPH1が機能的にだけではなく、物理的にも相互作用していることを見出した。そこで、MCPH1の領域欠失変異体を用いた実験を行ったところ、このタンパク質は中央領域を介してコンデンシンIIと相互作用していることがわかった。さらにこの領域内のアミノ酸を置換させた変異体を用いることで、相互作用に必須のアミノ酸を同定した。次に、無細胞翻訳系で発現させた組み換えタンパク質を用いた解析から、MCPH1はコンデンシンIIを構成するG2サブユニットと相互作用していることが明らかとなった。最後に、ヒトMCPH1をカエル卵抽出液に導入すると、抽出液中にあるコンデンシンIIの染色体結合能に影響を与えることがわかった。しかし興味深いことに、この活性を担っているのはコンデンシンIIと直接相互作用する中央領域とは異なる領域であった。現在、この制御領域に焦点を当てて、MCPH1によるコンデンシンIIの染色体結合の制御機構を詳細に解析している。
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