2010 Fiscal Year Annual Research Report
染色体凝縮の制御メカニズム:小頭症の原因タンパク質MCPH1の役割
Project/Area Number |
21770196
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山下 大輔 独立行政法人理化学研究所, 平野染色体ダイナミクス研究室, 基礎科学特別研究員 (50462742)
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Keywords | 小頭症 / MCPH1 / コンデンシンII / カエル卵抽出液 / 染色体凝縮 |
Research Abstract |
小頭症は、大脳および頭蓋の発達不全を伴う疾患である。その発症には遺伝的要因が大きな比重を占めており、これまでに7つの原因遺伝子が同定されている。このうち、MCPH1遺伝子に変異を持つ患者由来の細胞では、分裂期に先立つG2期において時期尚早な染色体凝縮が観察されることが知られていた。siRNAを用いた発現抑制実験により、この現象はコンデンシンII複合体の制御異常に起因することが見いだされ、MCPH1がコンデンシンIIの抑制因子として働いている可能性が示されていた。 本年度において、私は、カエル卵抽出液を利用して、MCPH1によるコンデンシンIIの制御機構を解析するための無細胞系を確立することに成功した。ヒトMCPH1を添加することで、分裂期抽出液中に存在するコンデンシンIIの染色体結合が顕著に阻害されることを見いだした。欠失変異体を用いることにより、阻害活性を担うのはN末端領域であることがわかった。興味深いことに、このN末端領域に小頭症の病因となるミスセンス変異を導入すると、コンデンシンIIの阻害活性は大きく損なわれた。これらの結果がMCPH1の細胞内機能をどのように反映しているかを調べる目的で、患者細胞を用いた相補実験を行った。その結果、患者細胞で観察されるG2期の染色体凝縮異常はMCPH1のN末端領域の発現により回復した。この結果から、MCPH1はコンデンシンIIの活性を直接的に制御することにより、G2期における時期尚早な染色体凝縮を抑制していることが示された。さらに中期染色体の形態異常を回復させるためには、N末端領域に加えて、コンデンシンIIと強固に相互作用する中央領域を発現させることが必要であった。すなわち、MCPH1は、2つの独立の機能を通じてコンデンシンIIを精巧に制御することにより、中期の染色体形成に貢献していることが明らかになった。
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