2011 Fiscal Year Annual Research Report
染色体凝縮の制御メカニズム:小頭症の原因タンパク質MCPH1の役割
Project/Area Number |
21770196
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山下 大輔 独立行政法人理化学研究所, 平野染色体ダイナミクス研究室, 基礎科学特別研究員 (50462742)
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Keywords | コンデンシンII / 小頭症 / 染色体凝縮 / MCPH1 / カエル卵抽出液 / 進化 |
Research Abstract |
小頭症は、大脳の発達不全を伴う遺伝性疾患である。その原因遺伝子の一つであるMCPH1遺伝子に変異を持つ患者由来の細胞では、G2期において時期尚早な染色体凝縮が観察されることが知られていた。次いで、この現象はコンデンシンII複合体の制御異常に起因することが見いだされていた。 昨年度、カエル卵抽出液を利用して、MCPH1によるコンデンシンIIの制御機構を解析するための無細胞系を確立した。その結果、MCPH1がコンデンシンIIの直接的な抑制因子であることが示され、MCPH1の変異によるコンデンシンIIの異常な活性化が小頭症の病因の一つであることが示唆された。 本年度は、この実験系を利用して生物種間におけるMCPH1の活性の違いを検討した。MCPH1のオルソログはショウジョウバエからヒトまで存在するが、そのアミノ酸配列の保存性は他の細胞周期関連タンパク質に比較して際立って低く、MCPH1は進化速度の速いタンパク質であることが知られている。こうした背景から、進化におけるMCPH1のアミノ酸置換が脳サイズの増大に貢献している可能性が指摘されている。まず、上記の無細胞系にマウスMCPHIあるいはカエルMCPH1を添加してみたところ、それらの有するコンデンシンIIの阻害活性は(ヒトMCPH1に比べて)極めて低かった。そこで、この実験系の簡便さを活かして、ヒトとマウス間での活性の違いを担うアミノ酸残基の同定を試みた。その結果、阻害活性を担うドメイン内の複数のアミノ酸残基と領域を組み合わせることにより、マウスMCPH1をヒトMCPH1様の高い活性を持つタンパク質に変換させることができた。これらの結果は、MCPH1によるコンデンシンIIの制御活性が進化の過程で大きく変化していることを示唆するとともに、開発した無細胞系がMCPH1の機能的進化を検出するための有力な手段となりうることを示している。.
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