2010 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質発生におけるニューロン分化と移動開始を結ぶメカニズムの解析
Project/Area Number |
21770230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 靖浩 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (50508108)
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Keywords | ニューロン / 細胞移動 / 神経発生 / 大脳新皮質 |
Research Abstract |
大脳新皮質発生において、未分化な神経系前駆細胞から分化したニューロンはそれぞれ適切な位置へ移動する事により緻密な神経回路を形成する。しかし何故分化したニューロンが移動を開始するかは不明であった。申請者はこれまでにSnail superfamilyに属する転写因子Scratch1がニューロン移動の開始制御に必須の役割を果たすこと、Scratch1が細胞間接着分子E-cadherinの発現を抑制することを示唆する結果を得ていた。H22年度は、まずE-cadherinの発現が低下することがニューロン移動を開始することに必要であることを明らかにした。更に、Scratch1の下流でE-cadherinの発現が抑制されることがニューロン移動の開始に必要であることを見出した。以上の結果から、Scratch1がニューロン移動の開始を制御するメカニズムは、中胚葉誘導の際に用いられる上皮間葉転換というメカニズムに非常に類似していることが明らかになった。すなわち本研究は、未分化な神経系前駆細胞から産生されたニューロンが移動を開始するという現象は上皮間葉転換の一つとして捉えることができる、という全く新しい概念を提唱するものである。これらは概ねH22年度の研究計画通りに行なわれ、本研究課題は順調に進められた。そして現在、これらの成果をまとめ、国際学術雑誌に投稿中である。また、学会にて口頭発表を行い、成果を発表した。
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