2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞におけるポリコーム依存的運命決定のメカニズムの解析
Project/Area Number |
21770231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平林 祐介 The University of Tokyo, 分子細胞生物研究所, 助教 (80447391)
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Keywords | 神経幹細胞 / 多分化能 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
神経系前駆細胞(神経幹細胞)は多分化能を有するが、その分化方向は発生過程の時期によって大きく変化する。大脳新皮質において神経系前駆細胞は、時間を追って順次各種のニューロン(6層→5層→4層→2/3層)を産生し、その後にアストロサイトなどのグリア細胞を産生する。この分化運命の変化のタイミングは、各種ニューロンやグリアの数の決定に重要である。運命変化の制御において、幹細胞は細胞自律的な要素により発生における「時間」を計っていると考えられているが、そのメカニズムについては多くが明らかになっていない。そこでPolycombがニューロン分化期内でのいかなる神経系前駆細胞の運命転換に関与するかを調べ、そのメカニズムを検討した。5層のSubcortical neuronの産生には転写因子Fezf2の発現が必要十分である事が知られており、Fezf2は5層ニューロン産生期が終わるとともに発現が低下する。そこで大脳発生前期から後期に渡ってそれぞれのステージにおける大脳皮質神経系前駆細胞を採取し、fezf2プロモーターにおけるヒストンH3 Lys27トリメチル化量の変化を調べた。その結果、fezf2プロモーターにおけるヒストンH3 Lys27トリメチル化量は発生時期依存的に増加していた。Polycomb群タンパク質であるRing1BあるいはEzh2のKOマウス由来神経幹細胞におけるFezf2の発現を調べたところ、野生型ではfezf2の発現が低下する5層ニューロン産生期以降においてもKOマウス由来神経幹細胞においてはfezf2の発現が維持されていた。以上の結果から、Polycombは発生時期依存的に働き、5層ニューロン産生期の終了に重要な役割を果たしていると考えられる。
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