2010 Fiscal Year Annual Research Report
パラログ遺伝子のシス調節配列の進化と遺伝子ネットワークのフェイルセーフ機構の解析
Project/Area Number |
21770234
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
越智 陽城 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特任助教 (00505787)
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Keywords | ゲノム / 遺伝子 / 発現制御 / 発生・文化 / 比較ゲノム / 進化 |
Research Abstract |
1.Pax2の腎臓エンハンサーの解析 平成21年度に行ったPax2/Pax5/Pax8のシス調節エレメントの解析で、Pax2のゲノム領域には8カ所の腎臓エンハンサーが存在することを報告した。本年度は新たに9カ所の腎臓エンハンサーをみいだし、さらにそれら腎臓エンハンサーが腎形成のいずれ時期に最も強い活性を示すのか初期尾芽胚期、中期尾芽胚期、後期尾芽胚期を用いてトランスジェニック解析を行った。その結果、2つのエンハンサーは前腎の分化が始まる初期尾芽胚期から後期尾芽胚期まで活性が見られたのに対して、15カ所のエンハンサーは腎小体や集合管の形成がみられる後期尾芽胚期でのみ強い活性を示すことがわかった。腎臓エンハンサー間で共通な転写因子の結合モチーフがみられるのか調べたところ、そのような特徴的なモチーフはみられなかった。Pax2は多様な入力シグナルにより活性化される複数のエンハンサーを持つことにより、腎臓での発現の変化が補償されていることが考えられる。 2.Pax2の発現量を感知する腎臓エンハンサーの同定 パラロググループでは、その一つを破壊しても残りの遺伝子の発現が亢進し、壊された遺伝子の機能を補うことがある。パラログ遺伝子間でお互いの発現量を感知するシス調節エレメントを探索するために、エンハンサーを融合したレポーター遺伝子をもつトランスジェニック胚内でPax2の発現阻害を行い、レポーターの活性を調べた。その結果、Pax2の発現量の減少に応答して活性が上昇するPax2とPax5のエンハンサーを同定した。これらパラログの発現量を感知して上昇する「フェイルセーフ型エンハンサー」の発見は、パラログ遺伝子間でみられる冗長性の分子メカニズムを解明する糸口をもたらすものとして、その意義は大きい。
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Research Products
(18 results)