2010 Fiscal Year Annual Research Report
持続的な遺伝情報複製に対するマイクロ環境の重要性の実験的検証
Project/Area Number |
21770256
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
市橋 伯一 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 招聘教員 (20448096)
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Keywords | 自己複製 / 無細胞翻訳系 / RNA / 細胞サイズ / マイクロ流路 / 複製酵素 |
Research Abstract |
本研究の目的は、マイクロサイズの反応場で寄生RNAが抑えられ、持続的な遺伝子複製が達成されるメカニズムを明らかにすることである。この目的のために、マイクロレベルで様々なサイズの反応場を調整し、その中で遺伝子複製反応を行なう必要があった。21年度は、まず、反応場サイズをマイクロレベルでコントロールする方法の確立を行ない、平均直径が2マイクロメートルから1ミリメートルに及ぶ範囲の反応場を調整する方法を確立した。さらに、界面活性剤の種類、反応場の調整法の検討により、その内部で遺伝子複製反応が阻害されることなく起こす条件を見出すことができた。 22年度は、21年度で確立した方法を用い、実際に遺伝情報の自己複製反応を様々なサイズの反応場内で起こし、その反応効率について解析を行なった。その結果、反応場サイズが小さくなるに従って、寄生RNAの増幅が抑えられ、同時に遺伝情報の複製がより持続的になることが示された。さらに、この遺伝子複製反応の各素反応の反応速度定数を求め全反応をモデル化したところ、反応場サイズの効果は、反応場を区画化により寄生RNAが閉じ込められるという封じ込め効果で説明ができることを示した。 本研究では、持続的な遺伝情報複製にとって、マイクロ環境により寄生体の増幅を防ぐことが重要であることを初めて実験的に示すことができた。この成果は、なぜほぼ全ての細胞がマイクロメーターサイズなのか?という未知の問題に対して一つの仮説を提示する。つまり、細胞が原始的で未だ複製の正確性が低かったころに、偶発的な寄生体の増幅を抑え、持続的に自身の遺伝情報を増幅するためにマイクロメーターサイズの区画構造に閉じ込められている必要があったという仮説である。本研究は、細胞サイズの起源という生物を理解する上で重要な問題について、実験的な証拠を提示できたという点において意義がある。
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Research Products
(3 results)