2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 美知夫 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (30322647)
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Keywords | チンパンジー / 社会 / 文化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、野生チンパンジーで「文化」と言われている行動変異について隣接集団間で比較することである。ここで「文化」とは、集団間で違いがあり、なおかつその違いが遺伝的な違いによるものとは考えにくいような行動パターンを指す。本年度は、おもにマハレM集団のチンパンジーを対象に、行動パターンについての情報の蓄積およびこれまでに蓄積した情報の整理・分析をおこなうとともに、隣接群Y集団の調査・人付けをおこなった。本年度の調査時期にはチンパンジーが高い地域を利用しており、アクセスの困難さから、本年度のデータだけで量的な分析ができるほどの観察回数は得られなかったが、新しいメスの移入を確認するなど、集団間関係と関連の深い事例は蓄積されてきている。また、ソーシャル・スクラッチという行動について、マハレのM集団の中では特異なパターンを示す個体の娘がやはり同じパターンを示していた事例を報告した。そもそもソーシャル・スクラッチは、チンパンジーの中でも少数の集団でしか確認されておらず、明瞭な機能も想定しにくいことから文化的な行動と考えられているものであるため、母子間での学習の結果と考えることが可能な事例である。さらに、これまでのチンパンジーの文化に関するデータの蓄積を元にして、「文化の偏在性と社会性の社会的継承の可能性」と題する論考を英語の論文集の一章として執筆した。 今後もY集団の人付けを進めていくとともにM集団の観察を継続し、隣接集団間での行動比較をおこなっていきたい。
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Research Products
(6 results)