2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 美知夫 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (30322647)
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Keywords | チンパンジー / 社会 / 文化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、野生チンパンジーで「文化」と言われている行動変異について隣接集団間で比較すること、メスの集団間移出入および集団間関係を明らかにすることである。ここで「文化」とは、集団間で違いがあり、なおかつその違いが遺伝的な違いによるものとは考えにくいような行動パターンを指す。タンザニア、マハレ山塊国立公園において、40年以上の長期調査の対象となっているM集団と、2000年頃から存在が確認されたY集団の2つの隣接する集団が本研究の対象である。本年度は、おもに野外調査でマハレM集団のチンパンジーを対象に行動パターンについての情報の蓄積、およびY集団の人付けおよび観察をおこなうとともに、国内ではこれまでに蓄積された情報の整理・分析をおこない、成果をとりまとめる作業をおこなった。Y集団の人付けは当初考えていたほどは、思うように進まなかったため、本年度はトラップカメラを導入することによって、無人での情報収集を試みた。トラップカメラに使用についてはまだ予備段階であり、今後設置方法や場所などを改善する必要がある。昨年度確認された、多数の新しいメスの移入に関する事例を報告するとともに、これまでのメスの移入事例の分析をおこない短報としてまとめた。同時に、これまでに蓄積されたM集団に関するデータの分析をおこない、デモグラフィーや文化行動に関する論考を英語論文集の一章として執筆した。また、今後隣接する集団間の関係を分析するために不可欠となるM集団の遊動域に関する長期データをまとめた結果を日本霊長類学会で発表した。 本研究自体はこれで終了するが、長期野外研究、とくに集団の人付けといった作業には、もっと長いスパンでの継続が不可欠である。今後もこうした試みを継続していきたい。
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Research Products
(7 results)