2011 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類および哺乳類の距骨サイズの変異:化石研究への応用に向けて
Project/Area Number |
21770265
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Research Institution | 株式会社林原生物科学研究所 |
Principal Investigator |
鍔本 武久 株式会社林原生物化学研究所類人猿研究センター, 系統進化研究部, 研究員 (20522139)
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Keywords | 霊長類 / 哺乳類 / 化石 / 距骨 / 体重推定 / ニホンザル / 種内変異 |
Research Abstract |
現生霊長類・哺乳類の距骨および歯の計測をおこない、さらに標本の基礎データ(体重・性別など)を標本所蔵機関のデータベースより取得した。また、前年度の研究で進めていた、全陸上哺乳類に対する「距骨サイズと体重との回帰式」の結果を論文としてまとめて、英文の専門学術雑誌に投稿した。さらに、霊長類のみを対象として、「距骨サイズと体重との回帰式」を解析し、同一種内の距骨サイズの変異についても検討した。 距骨化石からその化石霊長類の体重を推定するために、現生霊長類・ツパイ類の距骨サイズの計測値をこれまでに作成したデータベースから抜き出して、これらのデータの距骨サイズと体重との関係を検討した。その結果、全陸上哺乳類を対象とした場合とは違って、「距骨の全長」を使うのが体重推定に最も適していることがわかった。「距骨の全長」と体重との回帰式は次のようになった(単位:体重は[g]、計測値は[mm]):log[体重]=3.12log[距骨長]-0.81。この結果を応用して、ミャンマーの始新統ポンダウン層産のアンフィピテクス科霊長類の距骨化石、およびモンゴルとミャンマーの絶滅哺乳類アントラコテリウム類・デペレテラ類などの距骨化石の体重を推定した。 種内変異を調べるために、例としてニホンザルの成獣個体の距骨サイズと体重との関係を調べた。距骨サイズの変動係数は6.7~8.4だった。t検定の結果、距骨サイズに雌雄差が認められたが、bimodalにはならなかった。主成分分析をしたところ、PC1の寄与率が約80%であり、雌雄差はほぼ大きさの違いで、形態の違いはほとんどないことがわかった。距骨サイズと体重との相関は弱かった。この結果は、ある一種の霊長類の大人の距骨標本が複数個体分ある場合に、そのサイズの違いからその個体間の体重の違いや性差を推定することは難しい、ということを示唆する。
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Research Products
(5 results)