Research Abstract |
昨年度に引き続き,里地里山の二次的草地や樹林地の植物相復元に向けて,自然再生の成功/不成功の鍵となる生態的プロセスを明らかにすることを目的に,昨年度までに明らかとなった回復の困難な植物種群について,生育戦略の特性を把握・類型化を行った。具体的には,LHS戦略(Westoby,1998)に基づき,比重葉面積(SLA),最大植物高,生産種子重量,の3つの特性に関して,とくにSLAと単位葉面積および葉重量あたりの窒素含有量,その陽葉と陰葉での可塑性について,対象種を拡大して調査を行った。昨年度の調査結果と併せて,回復困難種とそれ以外では,葉面積あたりの窒素含量について,陽葉と陰葉での可塑性が大きいかどうかが明瞭な違いとして現れた。これは,最大植物高とも対応しており,ススキなどの競争優位種との光獲得に関する競合の中で,ある程度草丈を大きくしながら,かつ陽葉と陰葉で異なった光特性に関する特性を持ち得る種が,草地環境に適した種であることが明らかとなった。一方で,こうした種は永続的な埋土種子集団を形成しないことも明らかとなったことから,一度消失した後に埋土種子などからの再生産が困難になる傾向が確認された。これらの結果をもとに草地的植物種の類型化を行い,再生評価・モニタリングの際の指標種を,植物種の機能的な形態および個葉の化学的特性から抽出することが可能となった。ただし,半自然草地の復元の指標となる種の多くが,地下部からの栄養繁殖能力を長期間維持できる能力を有する可能性が高いことから,今後はそうした特性も含めた評価が必要であることも明らかとなった。
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