2009 Fiscal Year Annual Research Report
バラ科果樹における休眠の維持機構-ソルビトールは芽の生育開始を抑制しているのか?
Project/Area Number |
21780031
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
伊東 明子 National Agricultural Research Organization, 果樹研究所・果樹温暖化研究チーム, 主任研究員 (30355383)
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Keywords | 園芸学 |
Research Abstract |
バラ科果樹のナシおよびモモを材料に、糖アルコールであるソルビトールが自発休眠の維持にどのような役割を果たしているかを解明することを目的とする。具体的には、「ソルビトールは芽の成長を阻害することにより休眠状態の維持に貢献しており、休眠解除のためにはソルビトールが分解される必要があるのではないか」という仮説の当否を究明する。 本年度は、野外の自然状態で生育しているニホンナシ「幸水」を材料に、休眠の深浅に伴う芽のソルビトール含量およびソルビトール代謝活性の推移を明らかにするとともに、ソルビトールの投与が花芽の萌芽状態に及ぼす影響を検討した。 その結果、「幸水」芽においては、ソルビトール異化のキー酵素であるNAD依存型ソルビトール脱水素酵素(NAD-SDH)活性が、芽の自発休眠あけ頃の12/26から増加を開始し、翌年1/13頃にピークを迎えることが明らかとなった。また、芽および導管液のソルビトール含量は、NAD-SDH活性がピークとなる1/13に同じくピークを迎えた。 一方、2芽の切片に調整した「幸水」切り枝へ、1Mソルビトール、1Mスクロース、1Mフラクトース、1Mグルコース、1Mマニトール、水(対照区)を吸水法により投与したところ、自発休眠あけ以降の枝において、糖アルコールであるソルビトールおよびマンニトールには対照区に比較して萌芽阻害効果が認められ、その他の内生糖であるスクロース、フラクトースおよびグルコースには阻害効果が認められないことが明らかとなった。 以上の結果より、糖アルコールであるソルビトールには休眠あけ後の芽に対し、萌芽を抑制させる効果を持つものと考えられた。また、ニホンナシにおいては、休眠あけ時期以降、ソルビトールの芽からの除去が、NAD・SDHによる異化と、芽から導管への排出の2つのルートで開始する可能性が示唆された。
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