2010 Fiscal Year Annual Research Report
バラ科果樹における休眠の維持機構-ソルビトールは芽の生育開始を抑制しているのか?
Project/Area Number |
21780031
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
伊東 明子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所果樹温暖化研究チーム, 主任研究員 (30355383)
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Keywords | 園芸学 |
Research Abstract |
バラ科果樹のナシを材料に、糖アルコールであるソルビトールが自発休眠の維持にどのような役割を果たしているかを解明することを目的とする。本年度は、ニホンナシ栽培品種の中では休眠の比較的深い「幸水」と比較的浅い「豊水」を材料に、野外の自然条件下における休眠の深浅とそれに伴う芽のソルビトール含量およびソルビトール代謝活性の推移の関係を明らかにした。また「幸水」にソルビトールおよびソルビトール異化(分解)の鍵酵素であるソルビトール脱水素酵素(SDH)阻害剤(ファイザー製薬より提供)を投与し、花芽の萌芽に及ぼす影響を検討した。 その結果、NAD依存型SDH活性は、「幸水」においては芽の自発休眠導入期・最深期は低く推移し、自発休眠覚醒期の約半月後の1月13日頃に約9倍に増加した。「豊水」においては導入期・最深期は「幸水」より高いレベルで推移したものの、休眠覚醒期を過ぎた1月4日頃に2~3倍の活性の増加が認められた。また、導管液のソルビトール含量は、両品種とも休眠覚醒期に当たる12月下旬に10倍以上の増加が認められた。 一方、2芽の切片に調整した「幸水」切り枝へ1Mソルビトール、10mM SDH阻害剤、1Mソルビトール+10mM SDH阻害剤、水(対照区)を吸水法により投与したところ、ソルビトール投与には自発休眠覚醒期以降の芽の萌芽抑制効果が認められたが、SDH阻害剤は1月13日の投与により若干の阻害効果が認められた以外は効果が認められなかった。芽および枝のソルビトール含量は、ソルビトール投与により増加したもののSDH阻害剤投与では一過的な増加しか認められなかった。 以上より、ニホンナシにおいては、休眠覚醒期に転流糖であるソルビトール濃度が導管液において急激に高まるが、ソルビトールには萌芽抑制効果があるため、芽においてSDH活性を高めることによりソルビトールを分解(解毒)している可能性が考えられた。
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