2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境ストレス応答分子によって発現調節される細胞内感染防御遺伝子の探索
Project/Area Number |
21780045
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
寺島 潤 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (60400272)
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Keywords | 昆虫分子生物学 / 感染防御 |
Research Abstract |
我々はエクジステロイド応答遺伝子の一つであるE75BがDrosophila消化管細胞内での感染防御に重要であることを明らかにした。E75BはDrosophilaが栄養飢餓状態におかれたときに、生殖器官においてストレス応答の役割を担い、E75B変異体の産卵数は栄養飢餓状態で大きく減少することが明らかとなっている。これらの結果と、現在までの知見からストレス応答は、栄養飢餓、熱、感染それぞれに独自の応答経路があるが、同時に共通する応答経路も存在すると考えられる。昆虫においてはステロイドホルモンに対する応答経路、または代謝経路がそれに該当すると考えられ、我々はこのステロイドホルモン関連経路が種を越えて、ヒトでもストレス応答経路として作用しているのではないかと予想した。これら昆虫におけるストレス応答の研究を医療面へ応用することを考え、研究材料を肝ガン由来細胞株、HepG2を用い、血管新生に関わるグルコース飢餓への応答をDrosophilaで得られた知見を元にして解析した。この結果、ステロイドホルモンの代謝に関与するCYP1A1を含む経路、aryl hydrocarbon receptor (AhR)経路がグルコース飢餓に応答することが明らかとなった。グルコース飢餓によって、核内受容体であるAhRは核に移行し、CYP1A1などの酵素遺伝子の発現を誘導、そして酸化ストレス応答経路を活性化する。またこの経路が飢餓条件下でのHepG2生存と、血管新生に関与していることを示唆する結果を得た。AhRによって発現が誘導されるCYP1 familyは、薬物代謝酵素としての機能がよく知られており、将来、これらの研究によってガン細胞のストレス耐性、血管新生のメカニズムの解明と、創薬のターゲットとなる知見、抗がん剤に対するガン細胞の薬物代謝経路の応答などに有用な知見が得られることが予想される。
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