Research Abstract |
平成23度は,カイコ由来omega-class GST (bmGSTO)の活性触媒に関与するアミノ酸残基を部位特異的アミノ酸置換法により同定した.bmGSTOは,GST活性,dehydroascorbate reductase活性,peroxidase活性を発現する酵素である.bmGSTOアミノ酸配列中の38番目Cysならびに39番目ProをAlaに置換した変異体を組換え酵素として大腸菌を用いて作製した.それぞれの変異体酵素を硫安分画,陰イオン交換クロマトグラフィーそしてゲル濾過クロマトグラフィーの各手法を用いて電気泳動的に均一に精製した.精製後にbmGSTOが有するGST活性。dehydroascorbate reductase活性,peroxidase活性を測定した.その結果,それぞれの活性の大幅な低下が観察され,両残基はbmGSTO活性発現に影響を与えることが示唆された.さらに,カイコ5齢幼虫に農薬,紫外線,大腸菌を作用させた後,増加するbmGSTO mRNAの誘導をリアルタイムPCRにより,活性酸素量の増力は蛍光を用いて測定した.その結果,bmGSTO mRNA量の増加ならびに活性酸素量の増加が確認された.以上,誘導増加したbmGSTOは,各種stressorにより増加した生体内活性酸素の解毒に関与する可能性が得られた. また,グルタチオンそして基質結合部位を明らかにすることを目的とし,カイコ由来delta-class GST (bmGSTD)の結晶化を行った.sitting-drop蒸気拡散法によりbmGSTDの結晶を作製することに成功した.この結晶を用いてX線解析実験を行い,分解能2.0Åの回析データを得た.分子置換法により位相を決定し,bmGSTDの三次構造を決定した.この構造をもとにSerll, Gln51, His52, Ser67そしてArg68が活性に関与していることが示された.現在,bmGSTDのグルタチオン結合そして,基質結合部位を解析中である.
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