2011 Fiscal Year Annual Research Report
ニッケル過剰土壌における植物の鉄欠乏症発生と抑制法開発に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
21780054
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
水野 隆文 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (50346003)
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Keywords | ニッケル / 鉄 / 競合吸収 / シロイヌナズナ / 蛇紋岩 |
Research Abstract |
前年度までに鉄輸送体(IRT1)によるニッケル輸送が確認できたことから、平成23年度はニッケル曝露による植物の鉄欠乏認識について検証した。ニッケルに曝露したシロイヌナズナの根では鉄輸送体IRT1のみならず、根表面で鉄を還元する酵素FRO2や鉄の細胞内恒常性に重要な役割を持つ転写院試FITなどの遺伝子発現が上昇していることを確認した。これにより、ニッケルの曝露が植物に遺伝子レベルで鉄欠乏を認識させていることが確認された。また、実際の高ニッケル土壌におけるニッケルと鉄の相関について知見を得るため、2010年10月から翌年11月までの約1年間の期間において菅島の蛇紋岩土壌地帯に分布する76種類の植物を採取し、ICPを用いてニッケルを含む10種類の金属含有量について調査を行った。植物の平均ニッケル含量は20.3mgkg^<-1>D.W.であり、日本の一般植物の約10.5倍であった。25mgkg^<-1>D.W.以上のニッケルを集積する植物(アサマツゲを除く)については、ニッケル含有率と鉄含有率の間に高い正の相関関係(r=0.90)が認められた。採取した植物の中には一般植物の平均鉄集積の100倍近い鉄集積を行う主も存在した。この結果は先のシロイヌナズナIRT1の実験結果と同様、鉄輸送体を経由したニッケル流入を示唆するものと考えられ、また一部の植物については、体内に過剰量の鉄を蓄積するメカニズムを発達させることによりニッケルによる鉄欠乏症の発生を回避していることが示唆された。
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Research Products
(11 results)