2010 Fiscal Year Annual Research Report
ストリゴラクトンによる植物の分枝抑制作用と栄養応答に関する研究
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21780060
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
梅原 三貴久 独立行政法人理化学研究所, 促進制御研究チーム, 研究員 (30469895)
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Keywords | ストリゴラクトン / イネ / LC/MS-MS / 腋芽の生長 / リン酸欠乏 / カロテノイド酸化開裂酵素 / 分げつ |
Research Abstract |
植物の枝分かれを抑制するストリゴラクトン(SL)は、リン酸が欠乏すると根で過剰に生産される。一方、リン酸を供給すると、SLの内生量が減少し、植物は枝分かれを開始する。このとき、SL関連遺伝子(D3,D10,D14,D17,D27およびOsMAX1)の遺伝子発現を調べたところ、SL生合成に関わるD10,D17,D27はリン酸を供給すると、1日以内に発現量が劇的に低下した。また、イネにはMAX1ホモログが5つあるが、このうちOs01g0700900とOs02g0221900の2つがリン酸を供給すると、1日以内に発現量が劇的に低下した。これらの結果は、複数のSL生合成関連遺伝子がリン酸濃度の変化に応答して変動することを示している。一方、SLの下流で働くD14の発現量は、リン酸を供給する増加した。D3はリン酸濃度の多少に関わらず、遺伝子発現の変化が認められなかった。植物体地上部におけるSL関連遺伝子の発現も調べたが、全体的に発現量が根よりも低く、リン酸濃度の変化に対する応答性も根より低かった。これまでの結果を考え合わせると、リン酸欠乏時の枝分かれ抑制には根における内生SLの増加が大きな影響をもつと考えられる。また、アーバスキュラー菌根菌(AM菌)をイネに接種したときの生育の観察、分げつ数の調査、SL分析を行った。今回の結果ではAM菌を接種しても生育や分げつの数に差が認められず、SL生産量に関しては、AM菌を接種すると増加する傾向が認められた。さらに、リン酸以外の栄養を欠乏した水耕液でイネを栽培したところ、窒素、硫黄欠乏下でSLの内生量が増加し、反対にカルシウム欠乏下ではSL生産が低下し、分げつの伸長が観察された。これらの結果から、SL生産と枝分かれ、周辺環境の無機栄養量に強い相関があることが示された。
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