2010 Fiscal Year Annual Research Report
低炭素社会構築を目指した出芽酵母酸ストレス耐性化戦略の分子基盤
Project/Area Number |
21780072
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉山 峰崇 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80379130)
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Keywords | 酸ストレス耐性 / 乳酸 / 出芽酵母 |
Research Abstract |
過剰発現ESBP6による乳酸耐性化機構の分子基盤解析を行うため、本年度はHog1 及びSlt2 MAPキナーゼ経路の各遺伝子破壊株を用いた独自の評価系を立ち上げることに成功した。その結果、Hog1経路において、過剰発現ESBP6が付与する乳酸耐性化には、Pbs2 MAPキナーゼキナーゼのみが重要であり、Slt2経路においては、下流転写因子(Swi4、Rlm1、Skn7)のみが重要であることが明らかとなった。Pbs2はプロトンポンプであるPma1の活性化を促進するPtk2キナーゼと相互作用することから、Pbs2とPtk2キナーゼを介したPma1の活性化による細胞内に侵入した乳酸プロトンの排出が乳酸耐性化の分子基盤の一つである可能性が強く示唆された。一方、Slt2経路下流の転写因子は、40個程度の主に細胞壁構築に関する遺伝子を共通に制御している。乳酸アニオンは細胞内に蓄積し、細胞内膨圧上昇を引き起こすことから、これら40個の中に、細胞内膨圧に対抗するための細胞壁強化を通じた乳酸耐性化に重要となる因子の存在が示唆された。 ESBP6過剰発現は、乳酸ストレス条件下において細胞内pH低下や酸化ストレスを緩和できるストレス耐性アミノ酸(Gln、Glu、Lys、Arg、Pro)を野生型株の2倍以上高く維持できることを見出した。これらのストレス耐性アミノ酸の増加も乳酸耐性化に向けて重要であることが示唆された。遺伝子発現解析から、Haa1下流の新規遺伝子の一つとして、カルシニューリンの調節因子をコードするCNB1遺伝子が示唆された。Δcnb1破壊株は強い乳酸感受性を示したことからも、Haa1下流で乳酸耐性化に寄与していることが強く示唆された。本研究から得られた乳酸耐性化の分子基盤の理解が進めば、更なる乳酸生産収率向上が期待され、ポリ乳酸プラスチックの一層の普及に貢献できると期待される。
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Research Products
(4 results)