2010 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠恒常性における胎盤の機能ネットワークに関する研究
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21780089
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石田 純治 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (30323257)
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Keywords | 妊娠高血圧 / 胎盤 / 情報伝達 / アンジオテンシン / 遺伝子操作マウス |
Research Abstract |
近年、深刻な出生率の低下に伴う急速な少子化が進展する現在、国家は衰退の危機を迎えつつある。これは、単に"子供を産むための社会的な環境不備"だけでなく、妊娠高血圧症など『妊娠・出産に伴う母体と胎児に対する様々な危険因子』を回避できないことに大きく起因している。母体環境が胎盤を介する胎児との生理的相互作用によって構築されることから、妊娠という現象、またその病態異常を考察する場合、「母体」→「母胎」(母胎間ネットワーク)という概念への転換が必要であると申請者は考えている。母胎間ネットワークの本質は胎盤の担う生理的な機能ネットワークであり、胎盤の機能障害は、胎児の発育のみならず母体の恒常性をも破綻させ、母体は妊娠高血圧症となり、その胎児は発育遅延を起こす。現在、母胎間ネットワークの理解に向けた正常、および、病態時における胎盤の機能解析は全く行われておらず、また現時点では妊娠高血圧症に対しては胎児発育への悪影響を考慮し薬剤的治療も含め有効な方法は存在しない。そこで申請者は、「妊娠恒常性の維持機構とその破綻における胎盤の機能ネットワークの解明」を本研究の目的とした。 平成22年度は、「妊娠恒常性の維持機構と胎盤の機能ネットワークの解明」のため、正常妊娠および妊娠高血圧モデルマウスの胎盤を用いたマイクロアレイ解析を行い、妊娠恒常性の維持と破綻に関与する遺伝子発現プロファイリングを進めた。解析の結果、妊娠に伴う代謝関連遺伝子や血管形成関連遺伝子などのダイナミックな発現変化を同定した。また、「AT1受容体による妊娠高血圧発症メカニズムの解明」のため、妊娠高血圧モデルマウスに対してAT1受容体阻害薬、または、血圧降下作用に特化したヒドララジンの投与を行い、その病態改善効果を検討した結果、母体および胎児病態の発症・進展に、AT1シグナルの亢進による血圧上昇作用に加え、ATIを介する昇圧作用とは独立した作用が深く関与することを証明した。
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