2009 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍性抗生物質テトラヒドロイソキノリン類の全生合成
Project/Area Number |
21780106
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
渡辺 賢二 University of Shizuoka, 薬学部, 准教授 (50360938)
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Keywords | サフラマイシン / 生合成 / 天然物 / 遺伝子 / 酵母 / 非リボソーム依存性ペプチド / 異種発現 / 酵素 |
Research Abstract |
有望な抗腫瘍性物質エクチナサイジン743は海洋天然物であるため大量に得ることは困難である。一方、エクチナサイジン743に構造の類似したサフラマイシンは放線菌由来の代謝産物であり、その生合成遺伝子の取得は比較的容易であると予測されていた。そこで我々は、生産菌であるStreptomyces lavendulaeからサフラマイシン全生合成遺伝子群の取得を試み、全長を得ることに成功した。得られた生合成遺伝子群を用い、酵母による発現システムの構築を試みた。サフラマイシンの炭素骨格を生合成する非リボソーム依存性ペプチド合成酵素をコードしたsfmA,-B,-Cを酵母発現ベクターに導入した。これらの遺伝子は約5kbと巨大であるがギャップリペアークローニングによって目的の発現ベクターを構築することに成功した。さらに5個の修飾酵素をコードした遺伝子を酵母発現ベクターに導入した。以上、サフラマイシンの生合成に必要と推定された合計約20kbにおよぶ8個の生合成遺伝子の発現システムを構築することに成功した。8個の遺伝子は一つのベクターに2個ずつ導入され、4種類の発現ベクターとして得た。これら4種のベクターは耐性マーカーが異なっているため、一つの細胞に4種全てを形質転換し発現させることが可能である。本システムを酵母Saccharomyces cerevisiaeに導入した後、遺伝子を発現させサフラマイシンの合成に挑戦する。酵母は大腸菌と比較して、ベクターの安定性が高く、薬剤に対して高い耐性を示すことが知られている。多数の遺伝子を細胞内に導入し発現させる場合、ベクターの安定性は極めて重要である。また、目的物質は異種発現の場合、宿主に対して毒性を示す場合が多数である。抗生物質のオリジナル生産菌は、一般にポンプを発現し生産した抗生物質を排出する耐性機構が備わっている。しかし異種発現では細胞膜の構造などの相違によってオリジナルの耐性機構を活用できない場合がある。従って、薬剤に対して高い耐性を示す酵母は、生物活性物質の異種発現による生産モデル生物として適切であると考えられた。
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