2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍性抗生物質テトラヒドロイソキノリン類の全生合成
Project/Area Number |
21780106
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
渡辺 賢二 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (50360938)
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Keywords | 化学生物学 / 天然物 / 生合成 / 抗生物質 / 異種発現 / ペプチド / 酵素 / 物質生産 |
Research Abstract |
本研究では、酵母を発現宿主とし有用天然物を高収量で生産できるモデル合成システムの構築および、抗腫瘍活性物質テトラヒドロイソキノリン類を目的化合物として、それら生合成遺伝子を酵母へ導入し化合物の大量生合成を目的とした。 はじめにテトラヒドロイソキノリン類の代表的な化合物であるサフラマイシンの合成を試みた。サフラマイシン全生合成遺伝子は放線菌から単離され、全長約50kbと巨大なクラスター構造をとることが明らかにされている。酵母Saccharomyces cerevisiaeを宿主とした合成システムを構築するため、目的化合物のテトラヒドロイソキノリン骨格を生合成すると予測される、分子量約150kDaの3個の非リボソーム依存性ペプチド合成酵素(NRPS)と修飾酵素遺伝子の合計8個の生合成遺伝子群(sfmA,B,C,D,M_1,M_2,M_3,O_2)を双方向プロモーターによる発現誘導が可能な4種の発現ベクターに導入することとした。そこで、GAL1-10プロモーターを有する、それぞれ異なる4種のアミノ酸選択マーカーを持つ4種類の発現ベクターを作成した。さらに、NRPSを効率的にホロ化するためにホスホパンテテニル基転位酵素遺伝子(sfp)を宿主染色体上へ導入した。酵母染色体に導入したsfpおよびプラスミド上の8個の生合成遺伝子を発現させた後、ウエスタンブロッティングによって酵素へ翻訳されていることを確認した。現在、得られた形質転換酵母を培養しin vivo系において目的化合物の合成を試みている。 また、テトラヒドロイソキノリン類の生合成において共通の開始単位となるチロシン誘導体を500mg有機合成することに成功した。大腸菌発現によって得た精製酵素を用い、上記の開始単位を基質としてin vitro系における目的化合物の生産も確認中である。in vitro合成系によって得られる反応機構に関する詳細な知見を活用することで、様々な非天然型の誘導体を合成することが期待されている。
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