2010 Fiscal Year Annual Research Report
メタボローム解析によるアリール炭化水素受容体依存的な生体内代謝変動の評価
Project/Area Number |
21780125
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西海 信 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (20514706)
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Keywords | アリール炭化水素受容体 / メタボロミクス / 代謝物 / ガスクロマトグラフ質量分析計 |
Research Abstract |
アリール炭化水素受容体(AhR)は、様々な組織に発現しているが、その生体機能はほとんど明らかにされていない。AhRのリガンドとしては、環境汚染物質であるダイオキシン類やタバコの煙に含まれる芳香族炭化水素などの外因性の化合物がよく知られているものの、その生体内リガンドについての情報もほとんどないのが現状である。本研究では、細胞内低分子代謝物を網羅的に、かつ包括的に解析するメタボローム解析を実施することにより、AhRの外因性リガンドによる毒性発現機構を細胞内代謝の観点から検討した。C57BL/6JマウスにAhRのリガンドである3-メチルコランスレンを腹腔内投与し、肝臓、ならびに、血清中の低分子代謝物を、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いたメタボローム解析により分析した。その結果、アスパラギン酸やグルタミン酸など様々なアミノ酸が3-メチルコランスレン処理により増加することが確認された。また、TCA回路に関与するフマル酸やリンゴ酸量も増加した。一方、エネルギー産生の源となりうるグルコースの代謝が亢進されることも明らかとなった。さらに、AhR発現培養細胞株とAhR欠損培養細胞株とを用いた実験により、AhRを発現する細胞の方がグルタミン酸やグルタミンなどの様々なアミノ酸が高値を示すことが確認できた。これらの結果は、細胞内にAhRが存在し、かつ、AhRリガンドが生体に作用することで、エネルギー産生に関わる代謝経路が変動していることを示唆しており、これが毒性発現に寄与する可能性が考えられる。
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