2009 Fiscal Year Annual Research Report
多成分多相系でのガラス転移特性の解明と食品のガラス化予測モデルの構築
Project/Area Number |
21780126
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川井 清司 Hiroshima University, 大学院・生物圏科学研究科, 講師 (00454140)
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Keywords | ガラス転移 / ガラス転移温度 / 乾燥食品 |
Research Abstract |
近年、多くの乾燥食品がアモルファス状態にあり、水分含量や温度の変化によってガラス転移すること、食品がガラス転移することで加工性や保存性など様々な性質が変化することなどが明らかとなり、食品のガラス転移温度を理解することの重要性が認識されるようになった。本研究では、成分や構造が複雑な乾燥食品のガラス転移温度を広く理解し、それを予測に役立てることを目的とする。本年度(一年目)は基礎データの集積を目的とし、合成高分子(ポリビニルピロリドン)や天然高分子(デキストリンおよびイヌリン)をモデル乾燥食品の主成分として用い、溶質成分、水分含量、重合度(分子量)および結晶化度がガラス転移温度に及ぼす影響を調べた。モデル食品試料のガラス転移温度は水分含量の増加と共に顕著に低下した。この挙動は合成高分子の研究分野で報告される半経験式によって記述可能であることが確かめられた。また、分子量の増加によってガラス転移温度は高くなる結果が得られた。ガラス転移温度の分子量依存性を表す式についても合成高分子の研究分野では既に幾つか報告されている。しかし、いずれにおいても本研究結果への適用が困難であったため、拡張指数関数によって表す式を新たに提案した。一方、半結晶高分子を用いた試料との比較により、結晶化度の増加によりガラス転移温度は若干高くなること、ガラス転移温度の水分含量依存性は鈍くなることなどが明らかとなった。以上の結果より、組成が複雑な食品のガラス転移温度を予測するためのベースを得ることができた。
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