2011 Fiscal Year Annual Research Report
多成分多相系でのガラス転移特性の解明と食品のガラス化予測モデルの構築
Project/Area Number |
21780126
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川井 清司 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 講師 (00454140)
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Keywords | ガラス転移 / ガラス転移温度 / 乾燥食品 / 軟化温度 |
Research Abstract |
前年度に続き、モデル食品として単成分或いは多成分単相系(多糖類、単糖類、水及びそれらの混合物)のガラス転移温度を示差走査熱量測定によって調べ、その組成依存性を明らかにした。また、これらの結果を整理することで、多成分単相系におけるガラス転移温度の予測モデルを構築した。更に本年度は実在する食品(多成分多相系)の一例としてクッキーを取り上げ、そのガラス転移について検討した。多成分多相系の示差走査熱量測定では、各相の熱的応答が連続的に現れるため、ガラス転移に伴う小さい熱的摂動は覆い隠されてしまい、明確なガラス転移温度を検出できなかった。そこで応力緩和の温度依存性を連続的に捉える研究手法を構築し、ガラス転移に伴う巨視的な力学的性質変化(軟化)が現れる温度を調べた。試料の軟化温度は、水分含量の増加と共に低下した。これは水の可塑効果によるものと理解され、示差走査熱量測定を通じて得られた単相系のガラス転移温度と同様の解析アプローチが適用可能なことが明らかとなった。また、試料の軟化温度はそこに含まれる単糖の種類及び量に大きく依存した。これは、多成分単相系で明らかにされた結果、即ち高分子と低分子との混合系におけるガラス転移は、低分子が支配的に作用する事実と一致するものであった。更に、軟化温度の水分依存性から外挿値として得られた無水状態での軟化温度は、試料に含まれる単糖のガラス転移温度との間に一次の相関を示した。既往の研究により、単糖類のガラス転移温度は基礎データとしてリストアップされている。これらの値を先に得られた予測モデルに適用することで、様々な単糖が混在した状態(多成分単相系)でのガラス転移温度を予測できる。更にこのガラス転移温度から、多成分多相系における軟化温度を予測できる。以上より、実在する食品においてガラス転移温度と関連付けられる軟化温度を予測することが可能なことが示された。
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