2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質栄養状態の悪化による肝臓のインスリン活性増強機構の解明とその生理的意義
Project/Area Number |
21780134
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
鈴木 由香 日本医科大学, 老人病研究所, 助教 (70516070)
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Keywords | タンパク質栄養 / インスリン受容体基質 / 肝臓 |
Research Abstract |
成長期のラットに低タンパク質食を給餌すると、肝臓のインスリン受容体基質(IRS)やラバマイシン標的タンパク質(mTOR)を介したインスリンシグナルが増強される。さらに、脂質合成が促進されて、肝臓に脂質が蓄積する。本研究は、タンパク質栄養状態の悪化に応答して増強される肝臓のIRSおよびmTORシグナルの生理的意義を明らかにするとともに、タンパク質栄養状態の悪化に応答したタンパク質・糖・脂質代謝の連携機構を明らかにすることを目的としている。 そこで、本年度は以下の2点について実験を行った。 1、タンパク質栄養状態の悪化による肝臓IRS量の増加の生理的意義を明らかにするために、まず肝臓のIRSをノックダウンした動物モデルの作製が必須である。そこでIRSに対するshRNA発現アデノウイルスを作製し、まず培養細胞を用いて、作製したウイルスの効果を確認した。その結果、IRSのノックダウン効果を確認できた。 2、低タンパク質食を給餌したラットの肝臓で起こるIRSやmTORを介したインスリンシグナルの増強や中性脂肪量の増加は、十分なタンパク質量を含む食餌(標準食)の再給餌によって回復するか検討した。その結果、標準食を再給餌したところ、低タンパク質栄養状態で増加した肝臓のIRS-2のチロシンリン酸化は標準食再給餌2日目に有意に減少し、同じく増加した4E-BP1のリン酸化は標準食給餌4日目より有意に減少した。肝臓の中性脂肪量は、標準食給餌2日目より有意に低下した。以上の結果から、低タンパク質食を14日間給餌して起こるインスリンシグナルの増強と脂質蓄積は、標準食再給餌2日目以内に回復すると結論した。これらの結果から、タンパク質栄養状態の悪化に応答した肝臓の脂質蓄積はインスリン様活性と迅速に連動して起こることがわかった。
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