2010 Fiscal Year Annual Research Report
多価不飽和脂肪酸摂餌によるアルツハイマー病発症予防法開発に関する研究
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21780139
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
細野 崇 日本大学, 生物資源科学部, 助手 (80445741)
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Keywords | アルツハイマー病 / 多価不飽和脂肪酸 / アミロイドβ前駆タンパク質 / アラキドン酸 / ドコサヘキサエン酸 |
Research Abstract |
多価不飽和脂肪酸は脳の構成脂質成分として高濃度で存在している。しかし、加齢に伴ってその量が減少することが報告されている。本研究では多価不飽和脂肪酸(とくにアラキドン酸とドコサヘキサエン酸)に着目し、食餌による多価不飽和脂肪酸摂取がアルツハイマー病発症を予防できるか検討した。昨年度はアルツハイマー病モデルマウスのTg2576に多価不飽和脂肪酸を摂餌させた後、認知機能試験を行った結果、認知機能の改善が認められた。そこで、多価不飽和脂肪酸摂餌マウスの脳内でどのような変化が生じているか解析した。 多価不飽和脂肪酸(アラキドン酸、またはドコサヘキサエン酸)を食餌中脂質の4%含む餌、または含まない餌を9ヶ月齢から14ヶ月齢まで摂取させた後、解剖を行いマウス脳内のリン脂質中の脂肪酸組成の変化についてガスクロマトグラフィーを用いて定量した。その結果、アラキドン酸摂餌群では脳内のアラキドン酸量の増加、ドコサヘキサエン酸摂餌群では脳内のドコサヘキサエン酸量の増加が観察された。さらにアミロイドβ前駆タンパク質の代謝産物をWestern blottingで測定した結果、多価不飽和脂肪酸摂餌マウスでアミロイドβ前駆タンパク質(APP)の代謝亢進(APP断片の増加、アミロイドβ(Aβ)40,Aβ42の増加等)が認められた。また、Aβ42/Aβ40比の低下が見られた。しかし、Aβ産生に関与する酵素発現には影響が見られなかった。家族性アルツハイマー病における遺伝子変異の機能解析から、Aβ毒性発揮にはAβ42/Aβ40比の上昇が深く関与するとされることから、多価不飽和脂肪酸摂餌したマウスの脳内では多価不飽和脂肪酸含有量の増加によりAPPの代謝が変化し、Aβ42/Aβ40比が低下することで認知機能障害の軽減効果を誘導している可能性が考えられた。
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