2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21780140
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長田 典之 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 研究員 (80400307)
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Keywords | 常緑・落葉 / 光合成特性 / 力学的強度 / 当年枝 / 葉寿命 / 座屈安全率 |
Research Abstract |
森林に共存する樹種の葉の性質の多様性に関する研究は数多く行われているが、枝と葉の性質の関連については不明な点が多い。樹木の枝は光合成によって固定した炭素の主要な蓄積器官であり、その性質や死亡率の種間差は森林の炭素固定能力に影響する大きな要因であると考えられる。本研究は、森林に共存する樹種の葉の性質と枝の性質の関連性を調べることにより、これまで行われてきた葉の性質の多様性の研究と枝の性質と関連づけ、さらに森林の物質循環へ及ぼす影響の種間差を把握することを目的として行なってきた。 京都大学上賀茂試験地において、常緑樹と落葉樹を含む複数樹種を対象として葉の寿命と光合成特性、当年枝形態と枝の力学的強度の関係を調べた。落葉樹に関しては春の展葉期と秋の落葉期に毎週調査を行い、葉寿命を計算した。常緑樹では2009年にマーキングを行ったシュートについて追跡調査をおこない、葉寿命を算出した。これらのシュートについては枝の死亡率も調べた。さらに19樹種を対象として当年枝形態を調べるとともに、そのうちの11種を対象として形態・材質・物質分配およびヤング率を調べ、当年枝の力学的強度(座屈安全率)を算出した。 この結果、既存の研究と同様に常緑樹のほうが落葉樹よりも葉寿命が長く、光合成能力が低い傾向が見られた。一方、当年枝形態には常緑樹と落葉樹で明瞭な見られなかったものの、常緑樹よりも落葉樹のほうが座屈安全率が高い傾向が見られた。また、座屈安全率が似た種間でも、安全率に影響を及ぼす形態、材質、物質分配の相対的な影響が異なっていた。以上の結果から、常緑樹と落葉樹では、葉の性質と枝の性質は異なる影響を受けて決まっていると考えられた。
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