2009 Fiscal Year Annual Research Report
北東アジアにおける寒温帯性マツ属樹種の遺伝的多様性と分布変遷
Project/Area Number |
21780141
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
逢沢 峰昭 Utsunomiya University, 農学部, 助教 (70436294)
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Keywords | チョウセンゴヨウ / 葉緑体DNA / 系統地理 / 北東アジア / マツ科 / 分布変遷 |
Research Abstract |
本年度は、北東アジアのチョウセンゴヨウ集団に対して、葉緑体DNAの遺伝解析を行い、先のミトコンドリアDNA解析から推論された分布変遷のシナリオ、すなわち、(1)チョウセンゴヨウが過去に朝鮮半島から中国東北地方南部にあったレフュージア的集団から最終氷期後の温暖化にともなって北進・拡大した、あるいは(2)日本にあったレフュージア的集団から大陸に分布拡大した、というシナリオの検証を行うことを目的とした。解析はロシア3集団、中国5集団、韓国3集団、日本5集団(各集団4個体)のDNA試料を用いて、葉緑体DNAの3つの領域(tmC-tmD、tmS-tmGおよびtmL-tmF)についてダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定して、地理的変異の探査を行った。tmC-tmDは既存の塩基配列情報を基に、シーケンス・プライマーを設計して、2,401bpの塩基配列を決定した。解析の終了したtmC-tmDについては、大きく2つの系統が大陸・日本といった地理的位置に関係なく、広域的に分布していた。これは、2つの系統が祖先多型(ancestral polymorphism)に由来しており、古い時代に成立した系統が分布域全体の各集団内に保持されているためと考えられた。このような葉緑体DNAの地理的分化がミトコンドリアDNA解析の結果とは対象的に、集団間や大陸間で全く見られなかったのは、葉緑体DNAがマツ科では父性遺伝し、花粉を介した高い遺伝子流動を生じるためと考えられた。残りの2つの領域については現在解析中であるが、分布変遷のシナリオの検証を行うためには核DNAの解析が必要と考えられた。
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Research Products
(2 results)