Research Abstract |
本研究では,河川水中に含まれる溶存物質濃度を水文過程に基づいて推定する手法を確立しようとしている.本年度はその推定手法の確立にとって不可欠となる水文・水質データを得るための試験地を設定した.その試験地の一つとして,鳥取大学・蒜山の森にある森林流域を選定した.ここでは,約20年前に水文・気象観測が行われていたことがあり,その時のデータと量水施設が今も残っており利用価値が高い.本年度は,この量水施設の補修を行うとともに,降雨(3カ所),林内雨(2カ所;斜面上部と下部),流量(1カ所),土壌水分量(2カ所;平坦斜面と凹型斜面),地下水位(流路沿いに30カ所)の観測体制を整えた.さらに,栄養塩(全窒素,全リン)の濃度分析ができる体制を新たに立ち上げた.これにより,詳細な水の流出経路の把握と河川水の採取・水質分析が可能となった.この試験地とは別に,瑞牆山流域(管理,山梨大学工学部)と御手洗水流域(管理,九州大学演習林)を比較対象としている.瑞牆山流域については,管理担当の環境動態研究室(山梨大学)と協働関係を維持し,本研究の実施期間が終了するまで水文・水質観測を継続することを確認した.御手洗水流域については,管理担当の森林環境制御学研究室(九州大学演習林)から,これまでに蓄積した水質データの使用を認められている.また,雨水の流出経路と溶存物質濃度との関係をできるだけ多くの地域のデータを用いて解析するために,データ提供を受けることが可能な試験地を確保した.具体的には,日本水環境学会ノンポイント汚染研究会,全国演習林協議会,及びJST-CRESTの研究者等を通じて,宮崎,滋賀,高知,三重,愛知,東京,長野の森林流域で蓄積されている水文・水質データを使用できるようになった.
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