2011 Fiscal Year Annual Research Report
水の流出経路に基づく森林河川の溶存物質濃度推定法の確立
Project/Area Number |
21780150
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
芳賀 弘和 鳥取大学, 農学部, 准教授 (90432161)
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Keywords | 流出経路 / 森林河川 / 濃度 / 溶存物質 / 濃度-流量関係 |
Research Abstract |
主導流域での観測期間はH23年の梅雨あけまでの予定であったが,多様な降雨-流出の応答パターンを解析するために,観測期間を研究期間が終了するまで延長した.データ解析と結果のとりまとめは,随時行うとともに,学会や研究集会(日本森林学会や日本水環境学会に関連するもの)へ参加し成果を発表した.さらに,ここでの成果を負荷量や原単位を見積もる上で有用な知見として,ノンポイント汚染研究者ネットワーク(水環境学会・原単位検討委員会の森林班)に還流することとし,原単位検討委員会で積極的に参加した. 以上において,成果をとりまとめる際のポイントは,1)水の流出経路を把握することの重要性,2)水文ベース濃度推定法の他地域への適用可能性,及び3)DOC以外の溶存物質への適用可能性を検証することであった.特に,1)については,斜面での土壌水分量や地下水位に関する詳細な水文観測に基づく流出経路解析の他に,流域末端でのハイドログラフの特性解析に基づく簡易的で汎用性のある流出経路解析を試みた結果についてまとめた.2)については,7つの地域での観測データを収集し,データベースを作り,このうち3つの地域に対して本手法を適用した.3)については,DOCの他に,溶存態窒素,硝酸,及びケイ酸について本手法が適用できることが明らかになった.ただし,これらの物質の供給源濃度が出水イベント中に希釈される効果を導入しない限り,出水イベント時の濃度-流量関係の傾向や濃度変動の規模を説明することができなかった.本研究により,森林流域における負荷量推定手法として,水文ベース濃度推定法は汎用性が高いものの,出水中の数時間~数日という比較的短い時間スケールにおいて物質の供給源(例えば,土壌や基岩内部)の濃度変動過程が重要であることがわかった.
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