2009 Fiscal Year Annual Research Report
ツキノワグマによるクマ棚形成を介した間接効果とハビタット創出
Project/Area Number |
21780154
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
高橋 一秋 Nagano University, 環境ツーリズム学部, 准教授 (10401184)
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Keywords | ツキノワグマ / 間接効果 / エコシステム・エンジニア / クマ棚 / 林冠ギャップ |
Research Abstract |
本研究は、クマ棚の形成に伴う林冠ギャップの創出が下層の林内植物の繁殖(開花・結実)や更新(実生発生)に及ぼす影響(「ツキノワグマと林内植物の間接効果」研究)と、クマ棚の形成が小型動物のハビタット創出に与える効果(「エコシステム・エンジニア」研究)を分析することを目的とする。21年度は本研究の基礎固めとなるクマ棚の実態と形成要因に関する基礎研究を進展させたとともに、22年度以降のフロンティア研究に関するさまざまな調査方法を試行し、本格化する調査の準備を整えた。基礎研究では、過去5年以内にクマ棚が形成された樹木を対象に、クマ棚が分布する地形(沢・尾根・斜面)、クマに選択された樹木の種類・胸高直径、周辺に分布する樹木の個体数・種類数を調査し、クマの樹木に対する選好性を分析した結果、尾根地形の林内に優占し、かつ幹直径が太いミズナラ・コナラなどの樹木にクマ棚が形成されやすいことが明らかになった。また、樹木1個体あたりのクマ棚の個数、折られた枝のサイズ(枝元直径・長さ・幅)を計測し、クマ棚の形成により創出された小規模林冠ギャップの規模を樹木の種類で比較した結果、樹木の種類によって違いがみられることも明らかになった。これらの研究は今後のクマ棚研究を進めるうえで重要な基礎情報を与えるものであり、クマを介した小規模林冠ギャップの形成に関する新たな知見は森林動態の研究に貢献するものである。フロンティア研究では調査方法がまだ確立されていないため、クマ棚下の階層別の光環境の調査、林内植物の開花・結実・生長の調査、および樹上のクマ棚や林床・小川に落下した枝の束の微細環境における哺乳類と鳥類の調査(センサーカメラ)を試行した。22年以降実施するクマ棚下での実生調査に先立って、対象とする樹木の発芽条件を把握するために、樹上から採取した種子を対象にインキュベーターによる発芽実験を試行した。
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