2010 Fiscal Year Annual Research Report
ツキノワグマによるクマ棚形成を介した間接効果とハビタット創出
Project/Area Number |
21780154
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
高橋 一秋 長野大学, 環境ツーリズム学部, 准教授 (10401184)
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Keywords | ツキノワグマ / 間接効果 / エコシステム・エンジニア / クマ棚 / 林冠ギャップ |
Research Abstract |
本研究は、クマ棚の形成に伴う林冠ギャップの創出が下層の林内植物の繁殖や更新に及ぼす影響(「ツキノワグマと林内植物の間接効果」研究)と、クマ棚の形成が小型動物のハビタット創出に与える効果(「エコシステム・エンジニア」研究)を分析することを目的とする。生態学的なクマ棚研究の新領域を開拓し、森林生態学の分野に新たな視点と分析軸を提供する。22年度は21年度に引き続き、本研究の基礎固めとなる「クマ棚の実態と形成要因」に関する「基礎研究」を長期モニタリング・サイト(約3km2)で実施し、創出された小規模林冠ギャップの面積と空間分布を詳細に把握した。具体的には、過去4年間に樹上でクマが折った枝の直径カテゴリ(小:d≦1.5cm、中:1.5≦d≦3cm、大:d>3cm)の観察と落下した枝の長さ・幅・厚さ・直径の計測から小規模林冠ギャップ面積を推定した。樹木1個体当たりのギャップ面積は樹種間に有意な違いは認められなかったが、個体間のばらつきは大きかった(平均:5.6m2、最大:30.8m2、最小:0.2m2)。林冠ギャップの積算面積は1ha当たり平均234.2m2(最大:408.2m2、最小:44.1m2)と推定され、これは1個体の平均樹冠面積(57.Om2)の4.1倍(最大:7.2倍、最小:0.8倍)に相当した。林冠ギャップは林冠の各階層に形成されたが、上層~中層に集中した。モニタリング・プロット(20m×50m×13個)に出現する樹木(DBH>15cm)を対象に、林冠ギャップを有する樹木の分布様式を求めた結果、5m~10mの規模で集中分布を示した。21~22年度で「基礎研究」を精力的に実施し、「フロンティア研究」に関する新しい仮説を生み出すことができた。22年度は「フロンティア研究」に関する調査手法を試行・開発し、23年度以降に本格化する長期モニタリングの実施体制を整えることができた。
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