2010 Fiscal Year Annual Research Report
リグノスルホン酸の水酸基とスルホ基をそれぞれ賦形化と機能発現に活用した材料創製
Project/Area Number |
21780165
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺本 好邦 京都大学, 農学研究科, 助教 (40415716)
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Keywords | リグノスルホン酸 / 賦形化 / ポリビニルアルコール / ハイドロゲル / 吸水性 / 徐放性 |
Research Abstract |
【はじめに】木材から単離されたリグニンは直鎖状構造をとらず分子量が一般に高くないため,バルク利用が困難である。本研究では,工業的に入手可能なリグノスルホン酸(LSA)を対象とし,ポリビニルアルコール(PVA)との複合ヒドロゲルを簡便な手法で調製した。LSAのスルホ基を活用して,自重の>500倍の保水率を示す,あるいはカチオン性の生理活性物質であるニコチンを吸着・徐放することを見出した。 【方法】LSAとPVAの混合水溶液をグルタルアルデヒド(GA)で架橋した場合,ゲル洗浄時にLSAが溶出する。これを抑制してLSA含有率を高めるために,(a)LSAを予めポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDE,重合度13)で連結したもの(linked-LSA)とPVAの混合水溶液中でのGA架橋,および(b)LSAナトリウムをイオン交換して得たプロトン型LSA/PVAブレンドフィルムの熱架橋,の2通りの方法を検討した。 【成果】熱分析により,LSAとPVAは良相溶状態にあることを確認した。GA架橋(a)では,LSAを組み込むとPVA単独のゲルよりも保水率は向上し,linked-LSAを用いると更に増大した。特にプロトン型のlinked-LSAを用いると,自重の500倍以上の蒸留水を保水することがわかった。熱架橋(b)の系では,熱処理に伴い水素結合とPVA微結晶が発達し,これらに加えてスルホン酸エステルが生成することが確認され,いずれもが架橋形成に寄与していることが示唆された。熱架橋ゲルのイオン交換能は最大で~1.4mmol/gであった。厚さ約0.4mm(乾燥時)の熱架橋ゲルフィルムをニコチン溶液に浸漬するとニコチンを最大で0.8mg/cm^2程度取り込み,生理食塩水中で時間オーダーの徐放挙動を示した。吸着・徐放挙動には,架橋密度やスルホン酸エステル化度との相関が観られた。
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