2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21780174
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 壮一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任助教 (20507884)
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Keywords | アミノ酸 / 浸透圧調節 / 消化管 / 広塩性魚 / 栄養吸収 |
Research Abstract |
平成22年度の研究遂行の結果、広塩性魚ティラピア消化管におけるアミノ酸輸送体群の発現動態と生息環境浸透圧、餌料条件との関連の詳細が明らかとなった。まず栄養吸収の主たる場である腸管に着目し、部位別に発現量解析を前年度までに腸管より同定した内、12種のアミノ酸輸送体を対象に行ったところ1種を除き、そのほとんどが前腸において発現が高い傾向にあった。特に必須アミノ酸を輸送すると考えられる輸送体については前腸のみで発現するものもあり、その傾向は顕著であった。このことは真骨魚類において前腸がアミノ酸吸収に重要な部位であることを示している。次に生息環境浸透圧と腸管アミノ酸輸送体群発現の連関を検討したところ、多くのアミノ酸輸送体が海水群と比較して淡水飼育群において高発現を示すことが明らかとなった。アミノ酸輸送機構としてはNaなどの無機陽イオンなどと共輸送するメカニズムが知られており、海水魚の腸内液にはこれらが豊富に含まれる。ティラピアの海水環境での高成長と併せて考えると、今回の結果は淡水飼育魚の腸内イオン環境がアミノ酸を吸収しにくい状態であり、それを補うために輸送体の発現を増加させていることが強く示唆している。また1週間の絶食の影響として、輸送体群の発現は全体として減少傾向を示した。このことからアミノ酸輸送体の発現調節が体内の栄養条件のみならず、内容物の器械的受容や輸送基質の感知によって消化管自発的に調節される可能性が考えられる。本研究の成果はこれまで経験則的に蓄積されてきた魚類の成長と飼育条件との関連を明確に数値化した状態で詳細に解明し、より効率的な養殖などにつなげていく端緒となるものである。
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Research Products
(4 results)