2009 Fiscal Year Annual Research Report
漁具挙動の数値解析を用いた駆け廻し式底曳網における最適操業法の導出
Project/Area Number |
21780187
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
鈴木 勝也 Kinki University, 農学部, 研究員 (70449841)
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Keywords | 駆け廻し式底曳網 / 省エネルギー / 操業最適化 / シミュレーション工学 / 漁具漁法 |
Research Abstract |
今日の漁業分野では,曳網や旋網などの運用漁具における未成熟個体・漁獲非対象種の混獲,そして近年の燃料油高騰による漁業者への打撃を受けて漁船の省エネルギー化が重要課題となっている.本研究は,運用漁具の中でも操業過程における漁具挙動の把握が特に困難な駆け廻し式底曳網を題材として,数値シミュレーションにより操業中における漁具全体の水中形状の変化および漁具の局所荷重を詳細に把握する手法を構築することである.本年度は,駆け廻し式底曳網の実操業試験による操業情報および漁具挙動の実測と,操業情報の実測値を元にした漁具挙動の数値シミュレーションの比較検討に重点を置いた実験解析フェーズに着手した.長崎県平戸市志々伎地区および鹿児島県鹿児島湾内にて行った実操業試験により,航跡および浮標位置,網口深度,漁船と漁具の直線距離を測定した.そして,漁船と浮標の移動ならびに漁具の繰出と巻揚の拘束条件を加え,漁具を構成する各微小要素に作用する張力,抗力,付加質量力,重力,浮力,摩擦力を算定する数値解析手法を開発した.操業実験によって得られた網の平均沈降速度は0.21-0.31m/sであり,どの操業においても着底に近づくにつれて減速する傾向にあった.計算値における網の沈降速度は0.26-0.28m/sの範囲を示し,実測値と同様に時間経過に伴う沈降速度の減速が見られた.網口高さは実測値で2.4-10m,計算値で2.5-9.1mの範囲で変化し,両者ともに着底直後に最も高く,巻揚開始前後に最も低くなり,揚網に近づくにつれて徐々に高くなるという傾向が見られた.漁船と漁具の直線距離においても十分な一致を示しており,本手法は駆け廻し式底曳網の挙動特性および操業負荷評価に有効であることが示された.来年度ではこれらの結果をふまえ,漁具の漁獲効率および操業負荷軽減を両立する操業法を検討していく.
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