2009 Fiscal Year Annual Research Report
機能形態からみた魚類の外洋・陸上への適応形態の解明
Project/Area Number |
21780190
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
中江 雅典 National Museum of Nature and Science, Tokyo, 標本資料センター, 特定非常勤研究員 (30462807)
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Keywords | 解剖学 / 進化 / 水産学 / 脳・神経 / 機能形態 / マグロ / ハゼ科 / イソギンポ科 |
Research Abstract |
本研究は「緻密な解剖・観察による包括的な視点での魚類の環境適応形態の解明」の一端として,外洋と陸上という空間的な両極端の環境に適応したグループを徹底的に調査・比較するものである.初年度は試料の採集を主な作業としており,必要量の7~8割を確保することができた.また事前予想よりも試料収集および観察がスムーズに行え,以下の結果を得た.1,半陸棲魚の側線は各近似種のそれよりも退化傾向である.ミナミトビハゼでは頬部および躯幹部の感丘数が著しく減少し,ヨダレカケでは躯幹部の側線管が前方の1開口部を除き消失していた.ただし後者の感丘自体は尾柄部まで存在することが明らかとなった.両種とも水中に存在する時間が長い躯幹部で側線が退化傾向であることが興味深い.両種の全身の側線および側線神経の様態の知見は無く,本研究での描画が初となる.また躯幹部の側線管が消失しているイソギンポ科魚類での躯幹部後方の感丘の確認は本報告が初であると思われる.2,"腹鰭の展開力の強化"は腰帯背側の1筋肉要素を腹側へ移動させることによって行われている.高速遊泳魚であるクロマグロや半陸棲魚では,遊泳スピードの調整や陸上での体の保持のために他の一般的な魚種よりも腹鰭に強力な展開力が求められる.これらの魚種は腰帯腹側の筋肉を肥大させることを選択せず,背側の1筋肉要素arrector dorsalis pelvicusを腹側へ移動させることによって鰭を開くパワーを補っていることが明らかとなった.3,2重ポンプ型の呼吸を退化させても筋肉は退縮しない.多くの魚種が行う2重ポンプ型の呼吸をあまり行わないクロマグロやヨダレカケでもポンプに使用する筋肉要素が縮小したりしないことが明らかとなった.退化傾向を示したのは鰓蓋・鰓条骨や鰓蓋の弁であった,これら以外にも内部形態・微細構造によって裏打ちされた適応形態の事例が多数発見された.
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Research Products
(3 results)