2010 Fiscal Year Annual Research Report
機能形態からみた魚類の外洋・陸上への適応戦略の解明
Project/Area Number |
21780190
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
中江 雅典 独立行政法人国立科学博物館, 標本資料センター, 特定非常勤研究員 (30462807)
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Keywords | 解剖学 / 進化 / 水産学 / 脳・神経 / 機能形態 / マグロ / ハゼ科 / イソギンポ科 |
Research Abstract |
本研究は「緻密な解剖と観察に基づく包括的な視点での魚類の機能形態学的研究」の一端として,外洋と陸上という空間的な両極端の環境に適応したグループを徹底的に調査・比較するものである.本年度は標本の解剖および観察が主な作業であり,外洋魚の代表であるマグロ類よりも沿岸に生息するサバ科魚類(マサバ・サワラ)および半陸棲魚の代表であるミナミトビハゼ・ヨダレカケよりも陸棲性の弱い近縁種(ハゼ科ムツゴロウ・マハゼおよびイソギンポ科タネギンポ・ロウソクギンポ)を観察し,以下の結果を得た. 1)マサバ,サワラ,クロマグロの順で,眼下骨の退縮および全身の筋要素数の減少が認められる.また肩帯に対する腰帯の接続部位も下方に移動する傾向がある.だた,これらの差異が生態を反映するのか系統を反映するのか,今後の検討が必要であると思われる.そのためには,原始的なサバ科魚類とされているウロコマグロGasterochisma melampusとの比較が重要であり,今後の優先課題として挙げられる. 2)半陸棲魚のなかでもハゼ科とイソギンポ科間で側線の退化様式が異なる.ミナミトビハゼよりも水への依存が強いムツゴロウ(=弱い半陸棲魚)の感丘数は,水棲種であるマハゼよりも少なくミナミトビハゼよりも多かった.よって,ハゼ科の側線は陸棲性が強くなるに従って感覚器官である感丘数が明瞭に減少していくことが明らかになった.一方,イソギンポ科では,側線管が退縮する傾向があるが感丘数はあまり変化しないことが明らかになった.イソギンポ科魚類は水棲種でも感丘数が少なく,ハゼ科とは異なる感覚系の戦略をもつことが示唆される. 3)半陸棲魚の脳の外形は同様の傾向を示す.ハゼ科とイソギンポ科の半陸棲魚は,側線や鯛の筋肉で異なる形質を示すが,ともに水棲の近似種と比較して終脳が相対的に肥大することが明らかになった.
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Research Products
(2 results)