2009 Fiscal Year Annual Research Report
農家の価格反応行動および環境負荷を考慮した国際油糧種子・植物油市場に関する分析
Project/Area Number |
21780203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 浩敬 The University of Tokyo, サステイナビリティ学連携研究機構, 特任講師 (50451901)
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Keywords | 国際油糧種子・植物油市場 / パーム油 / 非対称価格伝達 / 価格支配力 / 需要独占 / 供給独占 / 中間業者 / インドネシア |
Research Abstract |
本年度は、バイオ燃料を含む国際油糧種子・植物油市場の開発途上国における同作物生産への影響分析を行うことを目的に、2009年10月にインドネシア・ジャカルタ、同北スマトラ州メダンを訪問し、データ収集、関係省庁、搾油企業、農家、中間業者等に対するインタビュー調査等を実施した。さらにこれらを基に、非対称価格伝達(APT)のフレームワーク、分析手法を用い、国際植物油市場でのパーム油価格の変動が、搾油企業、農家、中間業者からなるインドネシアのパーム油産業の価格形成に与える影響について分析を行った。インドネシアのパーム油産業では、国際価格に基づき、搾油企業がパーム果実(FFB)を集荷するために買い取り価格を提示する。それを指標に中間業者が搾油企業と集荷量に関する契約を結び、農家からパーム果実の集荷を行う。中間業者は、農家に買い取り価格を提示する。これがインドネシアのパーム油産業の基本構造であるが、それぞれの主体がそれぞれの経済インセンティブに基づき、価格の提示、売買などの自身の行動を決定する。当然、自身の厚生が最大になるように行動する。このような状況下では、国際価格の変動が必ずしも均等に伝達されない場合がある。本研究では、この点について非対称価格伝達のフレームワークに基づき、計量経済学的手法により統計的把握を試みた。結果として、1999年1月から2000年7月にかけては下方硬直的な価格伝達が確認され、搾油企業の価格支配力が相対的に強く、以降2007年4月頃までは、上方硬直的価格伝達の検出から、逆に農家の価格支配力が相対的に強いことが明らかとなった。これはインドネシアのパーム油産業が、国際植物油市場との結びつきが強くなった結果、国内での競争が激化し、需要者としての搾油企業の価格支配力が相対的に強い需要独占的市場から供給者としての農家の価支配力が相対的に強い供給独占的市場へと変化していったことを示すものである。
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Research Products
(4 results)