2011 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル下における離島農業・農村存立の論理と政策-南西諸島を対象として-
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21780208
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
坂井 教郎 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (80454958)
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Keywords | 島嶼 / 条件不利地域政策 / 共通農業政策 / 動物福祉 / 環境支払 |
Research Abstract |
EUの共通農業政策の中で島嶼地域がどのように扱われ,そうした政策が島嶼の農業・農家へ及ぼす影響について,イタリアの島嶼地域のうち,地中海の温暖な気候のもとで耕種・畜産ともに盛んであるサルデーニャ島の調査を実施し,以下の点を明らかにした。 EUの共通農業政策の中で,島嶼が特別な扱いを受けているわけではないが,サルデーニャ島は農業の生産性が低く,低人口地域であるため,島のほとんどの地域が「山岳以外の条件不利地域」として条件不利地域支払の対象となり,結果としてイタリアの「山岳以外の条件不利地域」支払予算の過半を使用していた。ただし同島の1経営体当たりの「条件不利地域支払」の額は農業所得の4%程度を占めるが,これだけでは条件不利地域以外との所得格差を埋めるには十分ではない。 サルデーニャ島においては,条件不利支払だけでは所得格差の是正に十分でない部分を,環境支払や動物福祉支払の形で条件不利支払と併せることで,実質的に島嶼条件下における所得格差を是正している。その際,農協が申請の手続を実質代行し,これまでの農業経営の内容を大きく変えることなく島内の農業者に広く支援が行き渡るような仕組みを島(州)レベルで作り上げている。 ただし,環境支払や動物福祉の基準がこの島独自のものであるとしても,その基準はEUのルールに基づく必要があり,EUによる認定が必要である。サルデーニャ島の環境支払や動物福祉支払は,透明性・客観性を重視するEUのルールに合致する基準を巧みに地域の中から見つけ出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内調査,海外調査および島嶼に関する統計分析ともに計画に沿って順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
EUの共通農業政策における島嶼の扱いを踏まえて,国内の南西諸島地域の実態調査を実施し,中山間地域等直接支払のような地域政策や島嶼農業が自立するための論理について考察を行う。
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