Research Abstract |
本研究では,地域特性に立脚したグリーン・ツーリズム(以下,GTと略)の推進形態を検討する基礎として,物理的条件(農業資源・地理的資源),心理的条件(参加意識・利用意向),社会的条件(法制度・土地利用計画)の観点から環境ストックの供給ポテンシャルとGTの活動パターンを明らかにし,耕作放棄地等の潜在的な環境ストックを高度に活用したGT活動の実践可能性を評価することを目的としている。 平成21年度は,物理的条件に着目して,休耕地や既存宿泊施設また交通網等の農村空間に存在する物理的な環境ストックを網羅的に収集し,事例地区における供給ポテンシャルを把握するための調査を行った。具体的には,既往研究におけるGT活動のパターンを類型化し,事例地区で収集した環境ストック,とくに市民農園の需要・供給可能性について分析を行った。市民農園等への休耕地の貸与意思を把握するため,N改良区の組合員3,433名を対象としたアンケート調査の結果を分析・整理した結果,全回答者(2,253名)の約6割がGTを「はじめて聞いた」と回答し,その推進についても消極的な回答が6割を占めた。また所有農地の一部を市民農園等に貸与することについて肯定的な意見を示した回答は全体の4割にとどまり,GTの推進や農地貸与に関しては慎重な意見が過半数を占めた。農地の貸与に肯定的な意思を示した回答者が所有する休耕地面積の和から,貸与可能な農地面積を推定した結果,「ぜひ貸し出したい」と答えた回答者(n=34)の休耕地面積の和は14.3haとなり,現在の5倍に相当する農地が潜在的に供給可能と見積もられた。これらの農地を顕在化させるためには,貸与期間中における農地管理の付託,借地料の享受,公的機関の関与などの条件整備を図ることが重要と考えられた。
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