Research Abstract |
本研究は,乾燥地の表面流出水捕集技術であるウォーターハーベスティングの地域環境条件に応じた最適設計を可能とするため,表面流出量と土壌面蒸発速度を高精度で予測可能な2次元土壌水分挙動モデルの開発を行うことを目的としている. 平成23年度は,圃場データの取りまとめ,既存モデルの数値計算,新規モデルの開発を中心に研究を進めた.22年度まで実施していた中国黄土高原・陳西省神木県六道溝流域のウォーターハーベスティングシステム(魚鱗坑)における土壌水分モニタリング結果においては,誘電率本分計の個体差ならびに温度依存性が見られた.そこでモニタリングの精度向上のため,新たに室内校正実験を実施し,個体差ならびに温度依存性を校正する校正式を作成した.校正式を適用した結果,校正前のデータからは見出すことのできなかった魚鱗坑の新たな水分保持メカニズムが明らかとなった.また,これまでの校正研究の成果から,室内校正試験を実施せず,現場から得られる地温と水分の時系列データのみを用いて温度依存性校正式を作成する,新たな簡易温度依存手法を開発することができた. これまでの圃場実験の結果を元に,既存の水溶質移動計算モデルであるHydrus2D/3Dを用いたウォーターハーベスティングのモデル化ならびに新規モデルの開発を行った.Hydrus2D/3Dを用いたモデル化では,22年度と同様に通常型のウォーターハーベスティングで比較的良好な計算結果が得られたものの,降雨強度が高い場合や,計算領域内に蒸発抑制のための砂利マルチ等が存在すると,計算が不安定化・停止した.新規モデルについては,入力データの整備,基礎式の組み立てまで完了し,限られたデータ内で計算が行える状態となった.本年度で助成期間は終了するものの,既に研究遂行に必要なデータ等は十分にそろっており,今後とも既存モデルを用いたウォーターハーベスティングのモデル化,ならびに新規モデルの開発を継続して行う.
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